自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
60 巻, 2 号
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第75回日本自律神経学会総会
  • 田村 直俊
    2023 年 60 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/23
    ジャーナル フリー

    体位性頻脈症候群(PoTS)の研究史を展望すると,その本態は理論的には解明済みである.現在のPoTSは英語圏のDa Costa症候群(1871),ドイツ語圏の迷走神経症(1892)・植物神経緊張異常(1934),スウェーデンの動脈性起立性貧血(1927)に相当する.英語圏・ドイツ語圏では,自律神経活動と情動の異常が共存する病態(心身症)と認識されていたが,心身症の解釈は両言語圏で異なり,前者では自律神経活動が情動の影響を受ける,後者では内受容感覚によって自律神経活動と情動が同時に惹起されると理解されていた.スウェーデンでは情動の問題を棚上げし,静脈循環の異常による静脈貯留症候群と説明されていた.現在,PoTSの情動異常が再認識され,原因として内受容感覚の異常が注目されている.内受容感覚の異常(亢進?)を想定すれば,PoTSの循環動態も心肺圧受容器反射のunloading過大で説明できる.

  • 新藤 和雅
    2023 年 60 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/23
    ジャーナル フリー

    冷え性とは,特別な基礎疾患がないにも関わらず,身体が冷え易く冷感過敏の状態を表現する用語である.健常者における冷え性のある人の頻度は,女性で約60%,男性では約20%とされており,男女差が大きい.冷え性のある人の身体的特徴は,体重が少なく,body mass indexも低下し,身体活動が少ないことが指摘されている.冷え性の病態は,心拍数,R-R間隔変動の周波数分析や皮膚血流量の測定結果から,冷え性のない人に比べて交感神経機能が亢進し,皮膚血流量が低下しているとされている.若年者では,寒冷刺激による皮膚交感神経活動の増加反応に過敏性があるとされており,皮膚血流量減少への関与が推測される.

  • 吉田 眞理
    2023 年 60 巻 2 号 p. 76-81
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/23
    ジャーナル フリー

    進行性核上性麻痺は頻度の高い4リピートタウオパチーで,臨床診断ではαシヌクレイノパチーであるパーキンソン病,レビー小体型認知症,多系統萎縮症との鑑別が問題となることがある.病理学的に胸髄中間質外側核や第2仙髄Onuf核には多系統萎縮症のような強い細胞脱落はないが神経原線維変化やpretangle,グリアの封入体が形成される.副交感神経核であるEdinger-Westphal核,呼吸中枢である延髄被蓋にもタウの病理像が出現する.進行性核上性麻痺の自律神経障害は自律神経核とその高次制御回路の両者のタウオパチーの関与が推測される.αシヌクレイノパチーの併存による臨床病理像の修飾も考慮する必要がある.

総 説
  • 石川 直樹, 朝比奈 正人, 梅田 聡
    2023 年 60 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/23
    ジャーナル フリー

    感情という現象には表情や心拍数の変化などの身体反応が随伴する.このうち,自律神経系に関連する指標に,顔面皮膚血流(以下,顔血流)がある.顔血流は顔温度変化と顔色変化に関わる点で,従来の自律神経指標と異なる特徴をもつ.感情における顔血流の変動は,顔領域内で必ずしも一様な反応性を持たず,前額,頬,鼻などで特異的な変動パタンを有する場合がある.加えて,これまでは30秒程度以上の反応動態を解析することが多く,感情に関連する場面において5秒程度の急峻な反応の検討を進めることは,関連する精神疾患のメカニズム理解や臨床的介入に対する有益な示唆をもたらす可能性がある.

ミニレヴュー
  • 野中 美希, 上野 晋, 上園 保仁
    2023 年 60 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/23
    ジャーナル フリー

    分子標的薬をはじめとする新薬の開発,ならびに医療技術の進歩に伴いがんサバイバーは年々増加している.一方,一部の抗がん剤は心血管機能障害を引き起こすこと,とりわけ免疫チェックポイント阻害薬は致死性の心機能障害を生じることが判明し,がん患者の生命予後やQOLに影響することが懸念されている.加えて,がん自体,およびその進行に伴って生じるがん悪液質によっても心機能障害を起こすことが明らかとなってきたことから,がん悪液質やがん治療がもたらす心機能障害を予防すること,ならびにその治療法を確立することは喫緊の課題となっている.運動療法は,慢性心不全患者において,生命予後を改善すること,加えてがんにおいても再発を防止し抗がん剤治療を完遂することが報告されている.本総説では,がん治療に伴う心機能障害,特にがん悪液質時の心機能障害に対する新しい治療法として,運動療法の治療効果について概説する.

  • 田仲 祐登, 寺澤 悠理, 梅田 聡
    2023 年 60 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/23
    ジャーナル フリー

    拍動や呼吸の速さ,胃の痛みなど,自律神経系を含む身体内部の状態は内受容感覚を通して知覚されている.近年,内受容感覚を測定する指標として,脳波における心拍誘発電位(Heartbeat-evoked potentials:HEP)が注目されている.HEPは心電図のR波を基準とした誘発電位であり,主観報告の必要のない,心臓からの求心性信号を反映している時間解像度の高い指標として,注意,感情,自己認識といった心的機能や,精神疾患と関係があることが報告されている.本研究ではHEPが有効な指標であることについて,さまざまな認知機能との関係性に焦点を当てながら概観する.

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