私たちは,ラットにおける中枢神経系による大腸運動制御機構の解明に取り組んできた.その結果,大腸における侵害刺激が脊髄を経由して脳に伝えられ,下行性疼痛調節経路の活性化,脊髄(腰仙髄部)の排便中枢におけるモノアミンの放出,骨盤神経の活性化というプロセスを経て,大腸運動が亢進することがわかった.また,下行性神経の起始部として縫線核および視床下部A11領域が重要であることが明らかとなった.これらの神経核から脊髄に下行する神経の活動を薬理遺伝学的に阻害すると,水回避ストレスで誘発される排便が抑制されることも判明した.本稿では,消化管運動の中枢性制御機構について,私たちの知見を中心にまとめる.