2024 年 61 巻 4 号 p. 188-192
私たちは,ラットにおける中枢神経系による遠位結腸・直腸の運動調節機構について研究を進めてきた.その結果,下行性疼痛調節系を構成する神経核が脊髄より上位の排便中枢としての役割を持ち,腰仙髄部の脊髄排便中枢を介して結直腸運動を制御することを明らかにした.また,この骨盤神経系の遠位結腸・直腸の運動調節機構が慢性的な刺激によって可塑的に変化することを発見し,パーキンソン病モデルラットにおいても結直腸運動が変化することを突き止めた.本稿では,中枢神経系による遠位結腸・直腸の運動調節機構と排便異常,特にパーキンソン病における慢性便秘の病態に関与する可能性について,私たちの知見を中心にまとめる.