2020 年 73 巻 1 号 p. 1-8
2010年から2014年の4年間に近畿地区の427医療機関から当社に提出された臨床検体より分離した10,797株のgroup B Streptococcus(GBS; Streptococcus agalactiae)について,ペニシリンに感受性が低下した株(PRGBS: Group B streptococci with reduced penicillin susceptibility)の分離頻度を調査した。その結果,506株のPRGBSが検出された。PRGBSの分離頻度は,材料別に呼吸器系材料5.8%(500/8,590),血液培養2.4%(6/250),GBSスクリーニングを目的とした膣分泌物材料0%(0/1,957)であった。さらに,125株のPRGBSおよび307株のペニシリン感性GBS(PSGBS)をランダムに抽出し,薬剤感受性率および莢膜抗原血清型別の調査を行った。薬剤感受性率では,PRGBSではvancomycinおよびmeropenem以外は低率であったのに対し,PSGBSではPRGBSと比較して全薬剤とも高率であった。材料別の莢膜抗原血清型と検出頻度の関係は,血液培養由来86株のうち,PRGBS 6株の内訳はIII型が50.0%と最も多く,次いでIa型33.3%,Ib型16.7%,一方PSGBS 80株の内訳は,Ib型が40.5%と最も多く,次いでIII型19.0%,Ia型およびVI型が13.9%であった。呼吸器系材料由来株のうち,PRGBS 119株の内訳はIII型が53.7%と最も多く,次いでIb型25.6%,Ia型13.2%,一方PSGBS 96株の内訳はVI型が34.7%と最も多く,次いでIII型29.5%,Ib型24.2%であった。GBSスクリーニングを目的とした膣分泌物材料では,PSGBS 131株の内訳はIb型が24.4%と最も多く,次いでIII型22.9%,Ia型22.1%,II型13.7%であった。今回の検討で,GBSスクリーニングを目的とした培養法からはPRGBSは検出されなかったが,医療関連感染対策や母子感染対策の観点から,今後の動向の監視が必要と考えられる。