The Japanese Journal of Antibiotics
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原著
各種経口キノロン薬のStreptococcus pneumoniaeに対するPK–PD理論を用いた有効性及び耐性菌出現に関する検討
大西 由美久田 晴美門田 卓美福田 淑子田中 知暁神山 朋子野村 伸彦水永 真吾
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2020 年 73 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

2016年~2017年に呼吸器感染症患者より分離されたStreptococcus pneumoniae に対するgarenoxacin(GRNX),levofloxacin(LVFX)及びlascufloxacin(LSFX)の抗菌活性を測定し,モンテカルロシミュレーションを用いて,Pharmacokinetics-Pharmacodynamics(PK–PD)による有効性及び耐性菌出現に関する評価を行った。また,耐性菌の出現を阻止する濃度であるmutant prevention concentration(MPC)を測定した。

S. pneumoniae 28株に対する各種経口キノロン薬の90%最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration: MIC90)は,GRNXが0.0625 μg/mLで最も低く,次いで,LSFXの0.125 μg/mL,LVFXの1 μg/mLであった。

モンテカルロシミュレーションにより,MIC値に対する常用投与量におけるfreedrug area under the curve(fAUC,f:非蛋白結合率)の比が,有効性のターゲット値である30が得られる確率を算出した。達成確率は,GRNXで100%,LSFXで79.6%,LVFXで62.8%であり,GRNXが最も高かった。耐性菌出現抑制の指標の一つと考えられているfCmax/MIC=5を達成する確率を算出したところ,GRNX, LVFX及びLSFXで,それぞれ100%, 60.4%及び0.31%であった。

S. pneumoniae に対するMPC90 は,GRNXで0.25 μg/mL,LSFXで2 μg/mL,LVFXで4 μg/mLであり,GRNXが最も低い値を示した。MIC90とMPC90の間の濃度域であるmutant selection window(MSW)は,GRNXで0.19 μg/mL,LSFXで1.9 μg/mL,LVFXで3.0 μg/mLであり,GRNXが最も狭かった。

今回のPK–PD理論を用いた解析結果より,S. pneumoniaeに対する有効性及び耐性菌出現の可能性が経口キノロン薬間で異なり,GRNXが最も有用であることが示唆された。

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