The Journal of Antibiotics, Series B
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抗腫瘍物質産生放線菌の選別に関する研究
丹保 好一
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1957 年 10 巻 3 号 p. 92-97

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抄録

HACKMANN1) が1952年actinomycin Cの抗腫瘍作用を報告して以来, 既にいくつかの放線菌抗腫瘍物質, すなわちactinomycin, sarkomycin2), puromycin3), azaserine4), carzinophilin5), gannmycin6), carcinocidin7), gancidin8), pluramycin9), mitomycin10) 等が単離報告されている。
この放線菌抗腫瘍物質をスクリーニングする方法についても, 梅沢等がラッテの吉田肉腫, マウスのEHRLICH腹水癌を用いて比較的簡単に培養濾液の抗腫瘍作用を検する手技を導入して, 多くの研究者の採用するところとなつた。
古賀11, 12) は吉田肉腫, 腹水肝癌を用いて, 既知抗生物質について, 抗腫瘍物質による治療の基礎的研究をおこない, carzinophilinの抽出精製過程における抗腫瘍成分を精しく追求し, 細谷等は試験管内接触後移植性の有無によつて抗癌力を判定する方法をEHRLICH癌と放線菌培養濾液に応用した (新家法)6)。また, 菊池, 松沢等13), 山本等4), 宮村15), 新井, 鈴木16), 等は各種のoxidoreduction indicatorを指標として癌細胞のdehydrogenase活性の阻害から抗癌作用を推定する方法を考案した。これらはいずれも抗腫瘍物質のスクリーニングの研究に大きな示唆を与えるものである。
著者は, 土壌放線菌のコレクション中, 同一の土壌試料から分離され, 生物性状, 抗菌像によつて, 同一菌種と推定されたものを除いた株について, 第1次スクリーニングとしては, 試験管内接触後移植法, 第2次スクリーニングとしては, 培養濾液の連日注射による延命効果を見る方法を採用して, 有効株を選別し, 更に有効成分の粗物質の抽出までおこなつたので, ここに報告する。

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