The Journal of Antibiotics, Series B
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Candida albicansの呼吸に及ぼすTrichomycinの影響
I. Candida albicansの糖質呼吸とTCA Cycle
塚原 叡
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1957 年 10 巻 5 号 p. 204-210

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抄録

Tricarboxylic acid cycle (TCA cycleと略) は, 高等動植物体細胞において, アセチル基の酸化機作として重要な意義をもち, アセチル基の完全酸化によつてエネルギーを供給し, cycle上の基質から重要な代謝物質を合成することは周知のとおりである。微生物におけるTCA cycleに関する研究も, 高等動植物のcycleが解明されるに従がつて次第に進められて来たが, 今日TCA cycleの存在がほぼ確実とされる微生物は,Micrococcus lysodeiktcus1), 2), 3), Flavobacterium aquatile4), Azotobater agilis5), Propionibacterium pentosacem6), Bacillus cereus7), Pasteurella turalensis8), Pasteurella pestis9), 10), Mycobacterium tuberculosisvar.hominis11), 12), Mycobacterium avium13), 14), Escherichia coli15)~20), Salmonella typhi21), Rhodospirillum rubrum22), Streptomyces coelicolor23), Aspergillus niger24), 25)およびYeast26) 等であるが, KING & CHELDELIN (1952) 27), 28) によれば,Acetobacter suboxydansは, Ethylalcohol, Glycerol, SorbitolおよびDioxyacetone等のAlcohol類およびGlucose等を酸化するが, Citrate, α-Ketoglutarate, Succinate, FumarateおよびAcetate等のTCA cycle上の有機酸を酸化せず, 従がつて本菌にはTCA cycleが存在しないものと見られ, またAcetobacter suboxydansのように, TCA cycleの存在しない菌種もあり, 微生物の呼吸様式は, その種によつて差があり, 甚だ複雑である。微生物におけるTCA cycleに関しては, なお検討すべき余地が多分にあり, たとえTCA cycleが存在するとしても, 本cycleが動植物体細胞のようにTerminal respiratory enzymes systemであるのか, 単に重要な中間代謝物質の合成反応としてあるのか, 完全なcycleではないが幾つかの個々の酵素反応が存するのか, 或いはTCA cycle以外の代謝経路があるのか等, 追究すべき点は極めて多く, 更に高等動植物体細胞との比較 生理学的研究も必須な問題でもある。先に, 余は各種抗生剤の作用機序を解明するため, その一端としてTrichomonas vaginalisの呼吸に関して検索したが (1957) 29), 更にCandida albicansの糖質酸化に関して, 殊にTCA cycleの存在についても追究し, 次の結果を得たので報告する。

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