The Journal of Antibiotics, Series B
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尿路感染症の診断と抗生物質療法に関する1考察
矢野 成敏
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1959 年 12 巻 3 号 p. 170-173

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抄録

抗生物質の出現は感染症の治療に非常な効果をあげて来ているが, 尿路感染症においては依然として治療の困難さが伴ない, 慢性化の傾向が強い。殊に, 腎孟腎炎などは臨床上, 高血圧症, 尿毒症, 妊娠中毒症などと密接な原因的関連をもつ重要視すべき症患であつて, 剖検例においてもかなり高率に見出され, しかも死亡の重要な原因となつているものが少くないにもかかわらず, この剖検で見出される比率は抗生物質出現後もあまり改善されていない。従がつて, 尿路感染症は, そのとり扱いに当つて, より確実な診断が必要であり, 更に適切な治療を要するものであると考えられる。現今, 確実な診断のために従来のように病原菌を染色培養で見出すだけでなく, 尿中の菌数を測定することが必要であるといわれるようになつた。これは, 診断のためばかりでなく, 治療の成果を精確に知りえて治療に当つての使用薬剤の適否を決める上にも極めて重要な役割をなしている。
私は, 当院入院ならびに外来患者について, カテーテル採尿をおこない, 従来の病原菌の塗抹染色, 培養検査ばかりでなく, 培養による菌数の測定をおこない, 同時に病原菌の抗生物質に対する感受性を測定し, 診断治療をおこなつたので, その成績を報告する。

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