The Journal of Antibiotics, Series B
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病原性ブドー球菌の各種抗生剤に対する戚受性分布と交叉耐性に関する研究
中山 一朗
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1962 年 15 巻 3 号 p. 99-105

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抄録

病原菌の薬剤耐性獲得現象は, 抗生剤出現の当初から注意されてきた問題である。各種の抗生剤が広範囲に用いられるようになつて十数年を経た今日において, 実際に重大問題になつたのは, ブドー球菌, 赤痢菌, 結核菌の薬剤耐性株であり, ことにプドー球菌はPenicillin, Streptomycin, Tetracycline等の今までに最も頻繁に用いられた抗生剤に対して年次的に耐性株が増加し, 化膿性疾患の化学療法に重大な支障をきたすようになつてきた。都合のわるいことには, 病原性ブドー球菌は健康人の鼻咽腔などに常在し, 高度耐性菌が健康人を介して広く伝播されることである。ことに, 病院がPest houseのように耐性ブドー球菌の大きな感染源になり, 入院患者, 外来患者に耐性菌による2次感染をおこし, 治療に支障をきたすような事例が増加してきた1) 2)。
病原性ブドー球菌がある薬剤に対して耐性か感受性かの濃度の境界は研究者によつて勝手にきめられている現状である4)。したがつて, これらの結果を用いて地域差, 年次的推移というような重要な問題を相互に比較するのに困難なことが多い。ある菌集団の薬剤に対する態度をもつと定量的, 普遍的に表現する方法について検討を加えなければならぬと考え, 著者は臨床材料から得た病原性ブドー球菌の感受性分布が対数正規型に近く, 各薬剤についての感受性の平均値および標準偏差の比較と, さらに耐性化につれてこれがどのような変化をおこしてくるかを検討した。また, 薬剤相互間の交叉耐性の有無の検定法にも, 新表現を試みた。
このような方法によつて, ブドー球菌の薬剤耐性の推移が研究されたら, より合理的, 普遍的であると考えここに提案する。

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