The Journal of Antibiotics, Series B
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各種化学療法剤と人血清ガンマ・グロブリンとの併用増加効果に関する研究第1報
マウスで肺炎球菌を用いた実験
須山 忠和小黒 義五郎
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1963 年 16 巻 5 号 p. 317-322

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抄録

古くから化学療法剤と抗血清の併用がマウスのブドウ球菌感染に対し相乗効果を示すことが知られていた (DE & BASU 19381)) が, FISHER (1957) 2), WAISBREN (1957) 3), MANNING et al.(1958) 4), FISHER & MANNING (1958) 5) 等が人血清ガンマ・グロブリンとクロランプエニコールとの併用が細菌性感染に対して著るしい相乗効果を示すことを報じて一般の注意を引いた。
大山, 堀田等6, 7)は, それらの追試として, マウスの肺炎球菌感染に対する人血清ガンマ・グロブリンとサルフアダイアジンの併用ならびに人血清グロブリンとクロランプエニコールとの生体内併用において著明な相乗効果をみとめ (試験管内ではこのような効果はない), その相乗効果発揮機転の解明を試みたが, 凝集反応, オプソニン反応, 爽膜膨化反応等の細菌血清間の免疫学的反応で説明し得るものを見出し得ず, またそのような相乗的効果はペニシリンやストレプトマイシンでは, クロランプエニコールほど著明でないことをみた。佐古8) もまた, クロラソフニコールとガンマ・グロブリンの相乗効果を追試し, 別手法でこれを証明した。上田等9) は寒天培地抗生物質添加によるブドウ球菌耐性獲得実験において, 人血清グロブリンの培地中添加によつて対抗生物質耐性獲得が著るしく阻害されることを示した。
この所見は早くも臨床試験に移され, 主としてクロランプエニコールと人血清グロブリンの併用効果が検討されたが, WAISBREN3), 高瀬等10), 吉村等11), 古賀2), 高木13), 伊藤4), 小牧15), 小野等16), 滝川等17), 鈴木等18), 藤田等19), 山下等20), 岩田等21), 坂井等22), いずれも著明な効果を報じている。そのうち, クロランフエニコール耐性菌の感染症にも効果をみとめられたものがあつて (伊藤4), 注目される。
このような相乗効果は, 今日まで主としてクロランフエニコールにおいてみとめられて来たが, それ以外の抗生物質において人血清グロブリンとの共同相乗効果があるかどうかは, まだ十分に確かめられていなかつた。この研究はこの点を明らかにしようとしたもので, 本報ではマウスで肺炎球菌を用いての菌血症を示標として実験したところを報告する。

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