The Journal of Antibiotics, Series B
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皮膚科領域におけるミカマイシン軟膏の使用経験
藤田 慎一荒田 次郎
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1964 年 17 巻 1 号 p. 12-14

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抄録

葡萄球菌感染症, なかでも耐性葡菌によるそれは, 近来注目を浴びている疾患の1つである。従来, 葡菌感染症は, 組みしやすいとして, ともすれば末端の座に追いやられる傾向にあり, さらに相次ぐ強力な抗生物質の出現によつて, 壊滅的打撃を受けるであろうと推測されたが, 豊かな順応力にものを言わせて出現した耐性葡菌は, 単に膿皮症に止まらず, 血流に入り, 強い治療抵抗性を示す心内膜炎, 脳膜炎, 産褥熱, 骨髄炎, 肺炎等重篤な疾病を招来することも, さして稀なものではなくなつて来ようとしている。
特に病院従事者における高率の耐性葡菌検出率, 院内葡菌感染症患者について調べてみると, 病巣および鼻前庭か'ら採取した葡菌ファージタイプが92%まで一致したとする報告, Penicillin使用前の葡菌性敗血症の死亡は, 80%以上と高率を示していたものが, 同薬剤の使用により, 一挙に25%と1/3に低下したにもかかわらず, その後次第に増加傾向を示し, 50%を上回つたとする報告とも併わせ考えれば, 溶連菌症に対応する葡菌症なる考え方が生まれ, 伝染病に準じて取り扱かおうとする気運のあるのも, 当然の帰結として納得できる。
それだけに, 在来, 抗生物質の適正なる使用, 健康保菌者の管理とともに, 常により有効な新らしい抗生物質の出現が待たれるゆえんである。
1961年, 梅沢浜夫等によつて, 土壌中の放線菌から得られた新抗生物質ミカマイシンは, 基礎, 臨床両面に渡る種々の研究により, その作用機序, 臨床効果その他の面で既に貴重なデータが得られ, 抗生物質に耐性の葡菌その他グラム陽性菌に有効であるとして, 臨床諸家の注目を浴びるところとなつているが, この度我々も本剤軟膏の提供を受け, 治験データを得たので, それに関連する2, 3のデータとともに, 以下に報告することとする。

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