The Journal of Antibiotics, Series B
Online ISSN : 2186-5469
Print ISSN : 0447-8991
ISSN-L : 0447-8991
Penicillinaseに関する研究 第2報
Penicillin, PenicillinaseおよびAntipenicillinaseの免疫血清孛的関係に関する研究
田中 栄一
著者情報
ジャーナル フリー

1965 年 18 巻 5 号 p. 354-361

詳細
抄録
近年話題を賑わしている耐性ブドウ球菌感染症の問題は, 化学療法につきまとう宿命的な問題であるが, この問題をどう解決するかは臨床上重要なことである。
耐性ブドウ球菌感染症の困難を打破するには, これら耐性ブドウ球菌を抑える抗生剤の開発はもちろん必要であるが, 一方では1つの手段として免疫療法的な手段の加味も考えられる。
1957年SHEEHAN1)はPenicillin (以下, PC) の全行程合成に成功し, 次いで1959年BATCHELOR2) 等が始めて治療界に新合成PCとしてα-Phenoxyethyl-PC (以下, PE-PC;Syncillin ‘Banyu’, Synthepen ‘Meiji’ Maxipen ‘Pfizer’) を登場させ, そして今また, 2, 6-Dimethoxyphenyl PC (以下, DMP-PC; Staphcillin ‘Banyu’, Methocillin ‘Meiji’) の出現3)をみたのである。
ところで, 合成PCのもつている重要課題の1つが, 従来のPCに対して耐性の菌に作用し得るPCの製造にあることはいうまでもないことである。そして, このことは, 既にDMP-PCによつてPC耐性ブドウ球菌 (以下, ブ菌) に対して成功した。このようにして, 相次いで合成PCが製造され, 耐性菌感染症の化学療法に優れた効果をおさめるようになつた。
一方, 既にPERLSTEIN等4), HOUSEWRIGHT5) FISCHER, COOKE, FREEDMANおよびMYERS等6)は, Penicil-linas e (以下, PC-ase) を動物に感作することによつて, その血清中にAnti PC-aseを産生することを報告し, CITRI7) 等はBaeillus cereus NRRL. 569が産生するα-PC-aseを抗原としてれた抗, 家兎を免疫することによつて得ら血清は, α-PC-aseの酵素活性を完全に阻害すると述べている。
著者はPC-aseの免疫学的研究の一環として, PC, PC-aseおよびAnti PC-ase間の免疫学的関係について検討し, 併わせてAnti PC-ase血清の存在下でPC-Gの耐性ブ菌に対する抗菌力がどう影響されるかをしらべた。
まず,CereusおよびStaph. PC-aseで免疫した家兎抗血清がCereusおよびStaph. PC-aseのPC-G分解作用にどのような影響を及ぼすかを検討するとともに, Anti Cereus PC-ase血清がin vitroでPC耐性ブ菌ならびに腸菌に対するPC-GおよびDMP-PCの力価をどのように増大させるかを比較検討した
次に, Anti Cereus PC-aseおよびAnti Staph. PC-ase血清の免疫血清学的特異性について検し, これらAnti PC-ase血清を塩析法によつて, Euglobulin, PseudoglobulinおよびAlbumin等の各蛋白分劃に分け, それぞれの分劃中の抗体価を測定するとともに, PC-ase酵素作用に対する抑制効果を比較検討した。
著者関連情報
© 公益財団法人日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top