The Journal of Antibiotics, Series B
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細菌溶解酵素Lysozymeの抗生作用に関する基礎的研究
中沢 昭三板垣 守正横田 芳武大谷 好子三輪 真知子鬼武 順子中山 孝昭房岡 温子
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1966 年 19 巻 1 号 p. 34-47

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抄録
本論文の要旨は, 昭和38年9月21日大阪における第43回日本抗生物質学術協議会関西支部研究会, 昭和38年10月8日前橋における第10回日本化学療法学会東日本支部総会, 同年11月16日京都における同学会中日本支部総会, 続いて昭和39年4月5日東京大学における第19回日本薬学大今, 同年6月11日仙台における第12回日本化学療法学会総会にそれぞれ続報したものである。
細菌を溶解する酵素としてリゾチームの存在が考えられたのは, 古く1907~1909年頃に遡る。しかし, 実際に抽出されたのは1922年で, ペニシリンの発見者として有名なALEXANDER FLEMINGによつて卵白から分離された。その後1937年, ABRAHAMらによつて結晶として得られるに至つた。近年このリゾチームが溶菌作用のほかに, 数多くの薬理作用をもつことが明らかにされ, 酵素テラピーの世界的ブームに乗つてヨーロッパ, とくにイタリアを中心に臨床医学の立場から再検討され, その有用性が明らかにされてきた。リゾチームは, 生体内にも広く分布しで, 粘膜, 結合織などのグルコサミンを基質とするムコ多糖類の生合成, 代謝に関与すことが報告されている。リゾチームを筋注および内服すること噂よつて組織の強化, 修復を促し, 抗炎症, 瘢痕形成促進, 血管壁強化, 感染防止, ウイルス増殖抑制など多方面な効果が挙げられている。
今回, 私どもはこのウゾチームの抗生作用ならびに多くの化学療法剤との併用効果について, 試験管内およびマウス実験的感染症の治療実験による生体内の両面から検討を試み, 2, 3の知見が得られたので, 茲に報告する。なお, 使用したウゾチームは, エーザイ株式会社から提供された結晶性卵白塩化リゾチームで, 18種のアミノ酸からなるポリペプタイドで, 分子量は約14,500, 白色, 無臭, 水に易溶で, 酸にもかなり安定であり, アルブミン・フリーである。
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© 公益財団法人日本感染症医薬品協会
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