1966 年 19 巻 4 号 p. 269-276
感染症に対する抗生物質の併用療法は, Penicillin (PC) とStreptomycin (SM) の出現以来, 広くおこなわれている。最近はSMとPCのほか, PC-VとNovobiocin (NB), Oleamdomycin (OLM) とTetracycline (TC), NBとTC, Chloramphenicol (CP) とTriacetyl-OLM等の合剤が製作使用され, 効果も確認されている1~10)。抗生物質を併用することによつて期待される効果には,(1) 併用による抗菌力の増強と抗菌スペクトルの拡大,(2) 細菌の耐性獲得防止または遷延,(3) 混合感染に対する効果などが考えられ, 事実これらの効果については, 多くの報告1~6, 10~12) 明がらかにしている。近年, 耐性葡菌の増加が問題にされており13~16), 耐性大腸菌の増加も注目されているが15, 17, 18), これらに対する対策として新らしい抗生物質の開発がおこなわれ, また抗生物質の併用療法が研究されている1~10)。Kanamycin (KM) は1957年梅沢博士によつて開発された抗生物質で, ことに葡菌, 大腸菌に対して高い抗菌力のあることが知られており18~20), 私も産婦人科領域で分離したコアグラーゼ陽性葡菌, 大腸菌についての検討でこれを確認することができた。一方, KMとPC間に抗菌協力効果があるといわれている23, 26)。私も既にこれを証明したが, さらに両者の併用について, 産婦人科感染症における基礎的, 臨床的検討をおこなつた。以下その成績を報告する。