The Journal of Antibiotics, Series B
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外科領域におけるAcetyl Spiramycinの基礎および臨床成績
石井 哲也島本 学横山 吉宏平賀 俊次岸 明宏
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1966 年 19 巻 6 号 p. 432-437

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抄録

近年化学療法の進歩, 発達は目覚ましいものがあり, 外科手術の適応の拡大, 治療成績向上に,麻酔学とともに大いに貢献したことは万人のみとめるところである。
一方, 抗菌性化学療法剤が広く一般に使用されるに至つたため, これに対する耐性菌の増加, または蔓延が問題となつて来た1, 2, 3, 4, 8, 10)。なかでも, 人体の各所に常在して, 表在性化膿, 手術創感染あるいは術後全身感染症の原因菌となる機会の多い黄色ブドウ球菌, Staphylococcus aureusの抗生剤耐性については,ABRAHAM1) 等の記載以来, Penicillin, Streptomycin, Tetracycline, Chloramphenicol, Erythromycinなど, 現在一般に常用されている薬剤に対する耐性頻度が急激に上昇した事実が多くの報告にみられ2, 3, 4, 5, 6, 8, 12), 特に2種類以上の薬剤に同時に耐性となつた多剤耐性株の増加は, 外科臨床上, 同株による感染症の治療に困ることが多くなり, 従来の抗生剤と交叉耐性をもたない新らしい薬剤の開発が望まれている。
Spiramycinは, Macrolide系薬剤として, すでに臨床的に優れた治療効果をおさめているが, 今回その誘導体であるAcetyl-spiramycinが協和醗酵工業によつて開発された13, 14)。これは, 従来のSpiramycinにくらべ, 高度の耐酸性があり, 血中および臓器内濃度の維持などの点でも優れているということであるから, より一層よい臨床効果が期待されたので, 同剤の供与を受けたのを機会に, 当方でおとなつた基礎的, 臨床的検討の成績を報告してみたいと思う。

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