抄録
カスガマイシン (以下KSMと略) は, 1964年梅沢浜夫博士らが奈良春日神社境内の土壌から分離したStreptomyces kasugaensisから得た抗生物質である。同博士らは, 本物質が稲イモチ病の病原菌Piricularia oryzaeに強い静菌作用をもつことを知り, さらに植物にたいして病原性のある真菌類および一部の白癬菌やカンジダ属にたいするin vitroの抗菌試験を試みている1)。
KSMは, アミノ糖とイノシトールからなる配糖体で, その効力は酸性側においてよく安定しているといわれる。KSMは生体に筋注したばあい, その吸収排泄が非常にはやいうえ, 尿からの回収率がきわめて高く, そして毒性のすくないことが特徴で, そのため医薬としての応用が期待され, 臨床的にはとくに緑膿菌による尿路感染症の治療に卓効を示すことが報告されている2)。
今回われわれは, KSMの各種病原真菌類にたいする抗菌スペクトルをしらべると同時に, 実験的Cryptococcus neoformans感染マウスの治療実験ならびに白癬の臨床的治験をおこなつてみたので, 以下その成績を報告する。