The Journal of Antibiotics, Series B
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ペニシリン療法によるPortio分泌物のpHの変化並びにPortio分泌物のpHと淋菌との関係
内山 義夫中村 勲
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1953 年 6 巻 9 号 p. 464-466

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抄録

業態婦の検診時に我々は, Portio分泌物が膿性であるものは, 無色透明漿液粘性のものより淋菌を発見する率が少ない傾向があることを感じていた。分泌物が膿性で, 白血球が多数に存在するものほど, 淋菌陽性率が高いと考えられ勝ちであるのに, 事実はむしろ逆であつて, きれいな, すきとおつた漿明性の分泌物を採取した場合に, 所々に現われる上皮細胞内に無数の淋菌が塊つて存在することが往々にしてある。このような現象はもちろん複雑な理由によろうが, その1つとして, 膿性分泌物のpHが淋菌の増殖に適さないのではないかということが考えられる。
Portio分泌物のpHが淋菌発育至適pHの範囲外になつた場合は当然, 淋菌は増殖せず, これが死滅せぬまでも標本上では相対的に白血球のみ存在して, 淋菌発見率は非常に低下することが考えられる。また, 膿性分泌物のpHと漿液粘性分泌のpHが大差ないとすれば, 或いは, 他の病原性の細菌が炎症を起して膿汁を出し, しかもこの病原性の細菌が淋菌と拮抗作用があつて淋菌の発育を抑制するのかも知れない。
上記の体験が, 統計的にはたして真実であるか, また真実であるとすれば, 前記の想像した理由がこれにあてはまるかどうか, 本院で毎週検診する業態婦のうち79名について, Portio分泌物のpHを測定し, 2.3の鏡検上の所見と比較検討してみたところ, いささか見るべき知見を得たので, ここに報告する次第である。
なお, ペニシリン療法によるPortio分泌物のpHの変化についても観察し得たので, これについても簡単に附記した。

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