The Journal of Antibiotics, Series B
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抗腫瘍性抗生物質ザルコマイシンの著効を奏した1例
鈴木 辰四郎堀内 博
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1955 年 8 巻 2 号 p. 61-64

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抄録

1952年に国立予防衛生研究所梅沢浜夫博士は, 鎌倉の土壤中から分離したStreptomyces erythrochromogenes Krainsky-W 155 C株の培養液中から1種の抗生物質を精製抽出し, 抗腫瘍性のあることから, これをSarkomycinと命名した。その後, Sarkomycinは動物実験の段階を経て臨床実験に移されたが, その結果に就いては昭和29年5月の第54回日本外科学会総会の席上, 関東逓信病院外科の石山博士等が報告した。
石山博士の症例は90例に達したが, 概ね悪性腫瘍の末期症状を呈するものが多かつた関係上, 効果は著明とは言い難かつた。しかし, 臨床的並びに病理組織学的に効果の確認されたものがあり, しかも副作用の皆無に近いと云う事実から, 悪性腫瘍に対する化学療法剤としての期待が大いに持たれた。
従来, 悪性腫瘍に対する化学剤としてはNitrogen mustard N-oxide (Nitromin) あり, 近くは8-Azaguanin (Azan) が登場して来ているが, 前者はもちろんのこと, 後者に就いても吾々の使用経験では副作用を認め, 治療の続行を不可能にすることがあつた。
私は遇然の機会を得て, 梅沢博士から供与されたSarkomycinを腹腔肉腫と診断された1患者に, 相当の長期間にわたり連続使用し, その臨床的経過を詳細に観察することが出来たので報告する。

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