The Journal of Antibiotics, Series B
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大腸菌のストレプトマイシン耐性及び依存性変異の研究第2編
ストレプトマイシン依存性菌の諸性状について
西沢 夏生
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1955 年 8 巻 6 号 p. 223-227

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抄録

MILLER & BOHNHOFF1) (1947) がストレプトマイシン (以下SM) を含む培地にだけ発育できる髄膜炎菌のSM依存性株 (Streptomycin-dependent variants) を分離して以来, 多くの細菌1)-8) についてSM依存性株が分離され, SM長期治療の肺結核患者喀痰中の結核菌からも, SM加培地において発育が増強されるSM増強株 (Streptomycin-enhanced strain) 9), 或いはSM依存性株10) が分離され, その諸性状について研究されている。
その分離の方法も, PAINE & FINLAND3) によれば, Staphylococcus aureus, Escherichia coli, Pseudomonas aeruginosa及びProteus morgagniのSM依存性株は, ただSM感受性株だけから分離され, 耐性株からは分離され得ないこと, また復元変異株(reverse mutant) は決して耐性株ではなくて, 感受性株だけであると報告されている。また, 牛場7) 等は, 腸炎菌のSM依存性株はSM耐性株のみから分離され, 且つ復元変異株もSM耐性株のみであつたと述べているし, YEGIAN, BUDD & VANDERHNDE11)は, SM感受性株, 耐性株のいずれからも, SM依存性株が分離されたと述べている。
SM依存性変異株の病原性に関する各研究者の知見もまた, 必ずしも一致していない。即ちYEGIAN & VANDERLINDE2), DOANE & BOGEN2), 柳沢13) は, 結核菌のSM依存性株を用いておこなつた実験において, 依存性株はSMの大量を投与した場合でも, 殆んど毒力のない程度まで弱毒化されていると述べ, LENNERT & HOBBY4) もH37RV株から得た依存性株の6株中, ただ1~2株だけはマウスに対し毒力をもつているが, 他の株はマウスに対し毒力がなく, 且つSM投与によつてなんら毒力が増強されなかつたと述べている。これに反して牛場7) 等は, 腸炎菌のSM依存性株はマウスに対して病原性を示さないが, 同時にSMを投与した場合に限つて, 毒力が発揮されると述べている。また, 各種細菌のSM依存性株は, SMを栄養素 (nutrients) として利用しているものと推定されて来たが(YEGIAN & VANDERLINDE2), OWEN10), 秋葉15), 榊原16)), 近来SEVAG17), WINSTEN18) は, この点に疑問を提示している。以上の諸事実に興味をもち, また今日までに発表された大腸菌のSM依存性株に関する研究3), 16), 19), 20), 21), 22) では, その病原性に触れていないので, 著者は以下の実験を試みた。

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