The Journal of Antibiotics, Series B
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Sensitivity Disc法による細菌の化学療法剤感受性測定法その2
金沢 裕
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1955 年 8 巻 9 号 p. 401-405

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抄録

細菌の化学療法剤に対する感受性測定法として種々の方法がおこなわれているが, Paper discまたはTabletを使用する平板拡散法は, 厳重な無菌的操作を要せず, 手軽に施行し得られるので, 臨床的に広く用いられている。これらの方法は,その創始者LUND等1) の記載及び使用説明書の範囲では, 感受性の程度を推定するに止り, 定量的測定についてはふれていない。
化学療法剤の体液中濃度は, 薬剤の種類, 投与量, 投与法 (経口, 注射, 局所使用等) の差によつて, また感染の部位 (血中, 尿路, 膿瘍等) によつてもかなりの開きがある。したがつて, 薬剤の有効性を正しく推定し, 適当な薬剤を選択し, その使用法を定めるには, 起因菌の薬剤感受性を或る程度定量的に知ることが必要であろう。宮村2) 3) はCup法における抗生物質の拡散理論式を提唱し, それに基づいた感受性の定量的測定法を報告した。私4) 5)はSensitivity Tablet (Roskilde) またはSensitivity Disk (昭和) を用いる測定法について, その実験成績に及ぼす条件を検討して, 次の結果を得た。(1) 培地pHの差異によつて阻止帯の長さが異なる。(2) 培地の量, すなわち培地の厚さによつて阻止帯が影響される。(3) 細菌の発育速度または発育型式の差異によつて生ずる感受性値と並行しない阻止円のバラツキを少なくするため, 培養前6時間以上放置する必要がある。(4) Penicillin, Dihydrostreptomycin, Chloramphenicol,Chlortetracycline,Oxytetracycline,Sulfathiazoleについては,阻止円直径と最少発育阻止濃度の対数の間には, ほぼ直径関係が認められる。(5) Colistinは他の薬剤と異なつた拡散型式を呈し, 阻止円の大きさから感受性を推定することの不可能な場合があり, 阻止円の大きさと感受性値の間に充分に相関関係が見られるように, Discの薬剤含有量を適当に決定する必要がある。(6) 平板中の薬剤拡散起点と考えられるDisc直下の寒天層の薬剤濃度は, Disc静置後13~22時間の間は比較的一定している。
以上の実験結果にもとづいて, あらかじめ感受性の決定された標準菌株を使用する感受性の定量的測定法について報告した。このたびは, 更に操作を簡単にするために, 各薬剤ごとに阻止円の大きさと最低発育阻止濃度の関係を検討し,阻止円の大きさから感受性値を直接計測する標準曲線法について実験をおこなつたので報告する。
既にTUNEVAL6), ERICSSONはPaper discを用い, 3時間室温放置, 18時間培養後の阻止円直径からDiagramによつて最低発育阻止濃度を測定する方法について報告しているが, そのほかの実験条件にはふれていない。

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