The Journal of Antibiotics, Series B
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NAH耐性菌の耐性度の本質に関する臨床的研究
三浦 幸二林 光男
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1956 年 9 巻 6 号 p. 294-296

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抄録

Isonicotinic acid hydrazide (以下INAHと記載) 耐性菌の耐性度について, PANSY等1) はB. C. G. において耐性復帰をみとめており, SZYBALSKI等2) はM. ranaeにこおいて, 耐性株よりも感性株が速く発育することによって逆変異を示すが, これをもつて, 直ちにin vivoで逆変異するとはいえぬといっている。これに反し, FISHER3) は耐性度の消失, 低下を見ないとしている。宝来4), 上島5), 石川6) は耐性復帰をみとめ, 佐藤7), 8) は患者排出喀痰について, INAH耐性度に対する検討をおこない, 更に継代培養による変動をみ, 5代継代でpopulationに変化はなく, 完全にINAH耐性を保持したといつている。なお, 患者から分離したINAH耐性菌では, INAHを加えない小川培地に継代すると, その耐性菌のpopulationに大きな変動をみとめたといっている。更に佐藤9) は, INAH感性および耐性結核菌を人工的に混合したpopulationの動態を観察し, 混含populationに分布する耐性菌の比率は一定の割合で減少していくのをみとめた。
著暑10) は, INAH 10mcg/ml耐性菌をINAHを含有する培地と含有しない培地に, それぞれ8代継代し, またINAH 100mcg/ml耐性菌をINAHを含有する培地及びINAHを含有しない培地に4代継代しても, population構成は変らなかった。しかし, 耐性菌数の生菌数に対する百分率の動揺をみとめたが, これはINAH耐性菌は本来の性質として, 不安定で, INAH耐性菌のpopulationを構成する1部分の個々の菌の耐性度に不安定がおこつたためと考えている。In vitroの成績を, 直ちにin vivoに適用はできないが, この点を明確にする目的で臨床的観察をおこなつた。

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