1969 年 22 巻 1 号 p. 79-86
テトラサイクリン系抗生物質は, 従来から広く使用されている抗生物質であるが, なお, いくつかの難点があり, これの解決のために種々の努力がなされている現状である。すなわち, 本剤の経口投与時にみられる胃不快感, 悪心, 嘔吐, 下痢等の胃腸障碍であるが, これらは, 従来のTetracycline製剤の水溶性が低く, たとえ, 酸性において溶解しても, 弱アルカリ性の腸管粘膜や組織と接触すると, 不溶性の沈澱を生じ, これが腸粘膜を刺戟して種々の障碍を惹起するとされている。また, これらの不溶性のTetracydineは, 吸収が悪いため, 血中濃度が上らず, 腸内に残留して腸内細菌に影響してAvitaminosis, Staphylococcia, Intestinalmycosisの原因ともなるとされている。
一方, Tetracycline製剤の筋注製剤は, 注射時賜所に激痛を伴ない, しばしば浸潤を生ずるのは諸家のみとめるところであるが, その原因としては, 難溶性のため, 組織と接触したさいに, 不溶性のTetracycline basdや, 蛋白結合物を形成するからであるとされている。さらに, 璋年の耐性菌の増加は, 諸家の広くみとめるところである。これらの難点を解決するため, 種々の努力がなされ, 新らしいいくつかの誘導体, 配合剤等が開発され, 目的を達しつつある。
1959年, PEDRAZZOLIは4'-(β-Hydroxy-ethyl)-diethylenediaminoethyltetracycline phenoxypenicillinate (Penimepicycline, 以下PMC) を開発した。PMCはTetracyclineの難溶性をAminomethylationによつて水易溶性としたHydroxyethyldiethylene diaminomethyl tetracycline62.6%, Phenoxymethyl penicillin37.4%を化学的に結合させて得られた塩である1, 2)。本剤の特徴は, その高水溶性のため, 吸収が容易であること, 耐性ブドウ球菌に対しても抗菌力を発揮すること, 筋注しても局所球応が少い, などの長所が挙げられている。われわれは, 本物質につき, 基礎的, 臨床的検討を加えたので報告する。