1970 年 23 巻 4 号 p. 363-378
新生児期に化学療法をおこなう機会は多く, 中でもChloramphenicol (以下CP) は, 広範囲な抗菌スペクトルムをもつため, 広く使用されている。しかし, 成人には無害でも, 新生児には予期しない副作用が発現するばあいがあり, CPによるGray syndromeも新生児に特異な副作用の1つである。
Gray syndromeは, 1959年, SUTHERLAND1, 2) がはじめて報告したもので, 新生児に比較的大量のCPを投与したさい, に一連の症状を呈し, しばしば死の転帰をとる重篤な副作用である。その後, 同様の報告3~12) が続々と現われ, わが国でも13~19) 14例が報告されている。
この原因は, 新生児では, 肝, 腎機能の未熟のために, 血中に活性のCPが異常に高い濃度を示し, この活性のCPそのものが作用するためであろう3) といわれているが, その本態は不明である。
私は, この問題解決に関して, なんらかの手がかりをつかむため, CPの新生児移行, 新生児における吸収・排泄, ならびに新生児の肝, 腎機能, 造血機能に及ぼす影響について検討をおこなった。さらに, 対照値についても考察を加えた。