1970 年 23 巻 4 号 p. 379-382
尿路感染症の治療は, 新らしい抗生物質, 化学療法剤の出現, 泌尿器科的諸検査法および手術療法の進歩などによつて最近はめざましい発展をとげている。しかし, 実際には, 尿の停滞を惹起する器質的または機能的疾患を残したまま抗生物質が濫用されたり, または不適当な抗生物質の使用などから, 多剤耐性菌による感染症を日常診療でしばしば経験しており, 尿路感染症に対する抗生物質の使用には細心の注意を要する。
近年, 抗生物質の新製品が数多く開発されているが, 今回, 万有製薬から注射用Hetacillin (Natacillin ‘Banyu’) の提供を受けたので, その尿路感染症に対する使用成績を報告する。Hetacillinは, 第1図のような構造式をもつBroad spectrum antibioticで,in vitroの感受性試験の結果では, 球菌のほかにグラム陰性桿菌群にも抗菌性をもつものとされている。