The Japanese Journal of Antibiotics
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Rifampicinの視神経に及ぼす影響
里吉 営二郎
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1970 年 23 巻 4 号 p. 403-410

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抄録

Streptomyces meaiterraneiから産出される代謝産物には, グラム陽性菌および結核菌に対して有効に作用するもののあることが1957年SENSIらによつて見出され, Rifamycinと名付けられた。このものは, 5種以上のものの混合物といわれ, このなかから最も制菌力が強く, 毒性の少ない物質Rifamycin Bが分離された。その後, Rifamycin Bの種々の化学的誘導体が合成され, その中のRifamycin SVからさらに合成された誘導体の1つであるRifampicin (DK-233),(3-(4-Methyl-1-piperazinyliminomethyl)-rifamycin SV) は, 生体においてグラム陽性菌, 陰性菌および結核菌に対して強い抗菌力をもつことがみとめられた。ことに結核菌に対しては, INHにつぐ抗菌作用があり, Streptomycinよりも優れていることが確められている1~9)。
Rifampicinが生体の種々の感染症に対して有効なことは, すでに欧州において報告されているが6~9), 最近, 本邦でも報告がみられ10~13), ことに, 結核に対して臨床的にきわめて有効であることが報告されている。
しかし, 従来抗結核剤として用いられているINH, Streptomycin, Kanamycin, Ethambutolなどは, いずれも中枢または末梢神経系に対して種々の障害を与えることがよく知られている。ことに近年用いられるようになつたEthambutolは使用量の多いばあい, 視神経炎および末梢神経炎をきたすことが報告され, 副作用として臨床家の注意を集めている13~16) 。これらの神経障害は, 多少とも薬剤特殊性があり, 侵される神経はそれぞれ異なつているが, いずれも末梢神経が強く侵され, 視神経, 聴神経, 末梢神経, ことに知覚神経の侵されることが多い。これらの神経障害は, 抗結核剤そのものが神経組織に対して特異の親和性をもつためと考えられるが, いずれも他の種々の中毒のさいにも侵されやすい神経であり, 神経組織の側からみれば, 比較的抵抗の弱い組織ともいえよう。Rifampicinについては, その中枢および末梢神経, ことに視神経に対する作用はまだあまり検討されていない。著者は, この点を明らかにする目的で, ラットにRifampicinを3ヵ月および6ヵ月間の長期にわたつて投与し, 種々の面から観察したので, その成績について報告する。

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