The Japanese Journal of Antibiotics
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Aminobenzyl Penicillin (Pentrex‘Banyu’) の産褥諸感染症に対する使用効果
大野 虎之進高畠 弘曽 敏明
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1970 年 23 巻 4 号 p. 421-423

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抄録

化学療法の進歩普及に伴なつて, 感染症の症状, 経過, 治療などは, 以前とはかなり異なつた様相を呈しており, 重篤な感染症はほとんどその姿を消しているが, 病原菌の種類についても, 化学療法剤に対する耐性の問題とも関連して, 大きな変革がみられている。しかし, 現今でも稀には非常に重症な感染症に遭遇することがある。
産婦人科領域においても, ブドウ球菌を始めとするグラム陽性球菌感染症や, 緑膿菌を主体とするグラム陰性桿菌感染症の増加は最近とくに注目されつつあるが, ことに, 院内感染の問題や, 新生児を取り扱う分野での重要性等が問題になつてきている。
Aminobenzyl Penicillin (AB-PC) は, 6-Aminopenicilianic acidからつくられた新らしい合成Penicillinで, グラム陽性およびグラム陰性球菌, 桿菌に強い抗菌性をもち, 酸に対して安定であるために, 内服によつて治療効果が発揮される点が特徴とされ, 抗菌性の範囲が広い点から広領域Penicillinと称されている。
化膿性球菌中PC感受性ブドウ球菌, 溶血性連鎖球菌, 肺炎球菌に対する発育阻止濃度は, PC-Gに僅かに劣るが, Tetracycline (TC) およびChloramphenicol (CP) より優れ, 腸球菌に対しては, PC-G, TC, CPを上廻つている。PC-G耐性ブドウ球菌に対する発育阻止力は, ペニシリナーゼによつて破壊されるために弱い。グラム陰性桿菌のうち, 大腸菌, 肺炎桿菌, 赤痢菌, チフス菌, パラチフス菌, 変形菌等に対する発育阻止濃度は, TC, CPに近似し, TC, CP耐性獲得赤痢菌に対しても感性である点が特徴的であるが, 肺炎桿菌, 変形菌, Aerobacter aerogenesの中には比較的感受性の低い菌株も存在するようである。また, インフルエンザ菌に対しては, TC, CPよりも感受性が高くなつている。
我々は, 東京歯科大学産科において分娩した褥婦に対して, routineにAB-PC (Pentrex ‘Banyu’) を投与し, 産褥時の諸感染症に対しても本剤を使用し, その効果を検討し, いささかの知見を得たので報告する。

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