The Japanese Journal of Antibiotics
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抗生物質の濃度分布を中心とする開放性骨折の化学療法について 第7報
Kanamycin筋注時の血中濃度および骨髄内濃度移行に関する実験的研究
近藤 茂
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1971 年 24 巻 2 号 p. 68-70

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抄録

カナマイシン (以下KMと略) は, 我国で最初に発見された広範囲抗菌性をもつアミノグリシド系の抗生物質であり, 図1のような構造式をもつている。
本抗生物質は, 広範囲の抗菌スペクトルをもつが1), 発見当時は, 我国の社会的要請によつて, 結核症に対して重点的に使用されていた。しかし, 1960年台の後半に入つてから, 我国の生活様式に急激な変化がもたらされ, 同時に産業の大発展と交通量の極度の増加によつて疾患のPatternにも大きな変動を生じた。結核症をはじめとする伝染性疾患の減少と, 老人性疾患, 代謝障害による疾患, および外傷性疾患の増加である。
特に, 外傷に関しては, 1969年の我国における死亡率の第4位が不慮の事故によるものとされている事実からも判明するように, 今や重大な社会問題とさえなつている。
特に, 整形外科, 災害外科の領域においては, 交通機関, 特に自動車の増加, 高速化によつて開放性骨折に接する機会が著るしく増えている。開放性骨折治療については, 創の1次閉鎖に成功するか, どうかが治療の鍵とされているのは, 種々の成書に記載されているとおりであるが, これに関して, 抗生物質の重要性は大きく評価されねばならない。事実KMも抗結核剤よりも, 創化膿防止, または治療としてのほうが重視されている現在である。
しかし, 骨関節組織においては, 抗生物質の移行濃度に関する研究は少く, また, 骨関節の損傷時における抗生物質の組織内濃度は, 未だほとんど究明されていない。そこで, 著者は, 現在, 臨床に広く供されている抗生物質について, 骨関節組織内濃度を正常時, および損傷時について実験的, または臨床的研究をおこない, 数次にわたつて発表して来た2~7, 9~15)。
本論文においては, 正常骨髄におけるKMの移行濃度を, 家兎について測定したところ, 興味ある実験成績を得たので, 以下に報告する。
なお, ここで附記するが, KMが発見され, 米国に紹介されたときには, 抗結核剤としてではなく, 化膿菌感染症に対する予防 (特に, 術後感染), または治療として使用されていた点は, 現在の我国と一脈の類似がみられ, この点も興味深く感じられる。

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