The Japanese Journal of Antibiotics
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各種抗生物質の膵液中移行に関する実験的研究
高山 宏夫
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1973 年 26 巻 5 号 p. 427-438

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抄録

化学療法の進歩にともなつて, 外科手術後の, いわゆる, 術後感染症発生の頻度は減少している。しかし, なお他の手術と同様に, 膵臓手術に伴なう細菌感染の予防および治療は, 予後の面からみても重要なことは論を待たない。特に, 膵頭十二指腸切除術, 膵部分切除術などでは, 感染の機会が多く, 加えて, 全身状態不良のものが多く, どもすれば感染が致命的となり得る。また, 最近年々交通外傷が増加しており, 腹部打撲による膵臓損傷または, その後の膵痩形成なども, しばしば遭遇する問題である。腹部一般手術後に発生する術後膵炎を考えてみても, 重篤な合併症であり, 死亡率も依然として高い。このような点から, 至適抗生物質の選択上, 抗生物質の膵臓への効果をみるために, 臓液中の各種抗生物質濃度の消長を測定することは意義あることと考えられる。しかし, 人体において純粋に膵液を採取することが困難であるため, 以上の目的に沿つた報告は, 今日まできわめて少ないように思われる。膵嚢腫, および膵仮性嚢腫, 膵結石にRoux-Y膵空腸吻合術を施行後であるとか, または膵外傷後などに膵痩を形成, 持続的に膵液の流出をみた症例において, 現在までErythromycin, Chloramphenicol, Penicillin, Streptomycin, Kanamycin, Tetracyclineなどを投与し, その膵液への移行濃度を経時的に測定した報告がある1~6)。それらの抗生物質の中でKanmmycin, Streptomycin, Erythromycinが比較的良好な移行濃度をみているが, 他の薬剤では, 非常に低濃度の移行であるか, または, ほとんど移行をみていないようである。本邦においては, 片山が犬を用いた実験において, Secretin投与後, 純粋な膵液を採取し, 各種抗生物質を経静肱的に投与後, 膵液中の移行濃度を経時的に測定し, Erythromycin, Leucomycin, Tetracycline, Penicillin, Cephaloridineの順に高値を示したと報告しているだけである。著者も, 純粋な膵液中への各種抗生物質の移行を観察する目的から, 雑種成犬を用いて, れを開腹, 十二指腸を切開し, 主膵管に直接カニユレーションをおこない, 純粋な膵液を採取し, 抗生物質濃度を経時的に測定し, 一連の成績を得ることができたので報告する。

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