The Japanese Journal of Antibiotics
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26 巻, 5 号
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  • 高山 宏夫
    1973 年 26 巻 5 号 p. 427-438
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    化学療法の進歩にともなつて, 外科手術後の, いわゆる, 術後感染症発生の頻度は減少している。しかし, なお他の手術と同様に, 膵臓手術に伴なう細菌感染の予防および治療は, 予後の面からみても重要なことは論を待たない。特に, 膵頭十二指腸切除術, 膵部分切除術などでは, 感染の機会が多く, 加えて, 全身状態不良のものが多く, どもすれば感染が致命的となり得る。また, 最近年々交通外傷が増加しており, 腹部打撲による膵臓損傷または, その後の膵痩形成なども, しばしば遭遇する問題である。腹部一般手術後に発生する術後膵炎を考えてみても, 重篤な合併症であり, 死亡率も依然として高い。このような点から, 至適抗生物質の選択上, 抗生物質の膵臓への効果をみるために, 臓液中の各種抗生物質濃度の消長を測定することは意義あることと考えられる。しかし, 人体において純粋に膵液を採取することが困難であるため, 以上の目的に沿つた報告は, 今日まできわめて少ないように思われる。膵嚢腫, および膵仮性嚢腫, 膵結石にRoux-Y膵空腸吻合術を施行後であるとか, または膵外傷後などに膵痩を形成, 持続的に膵液の流出をみた症例において, 現在までErythromycin, Chloramphenicol, Penicillin, Streptomycin, Kanamycin, Tetracyclineなどを投与し, その膵液への移行濃度を経時的に測定した報告がある1~6)。それらの抗生物質の中でKanmmycin, Streptomycin, Erythromycinが比較的良好な移行濃度をみているが, 他の薬剤では, 非常に低濃度の移行であるか, または, ほとんど移行をみていないようである。本邦においては, 片山が犬を用いた実験において, Secretin投与後, 純粋な膵液を採取し, 各種抗生物質を経静肱的に投与後, 膵液中の移行濃度を経時的に測定し, Erythromycin, Leucomycin, Tetracycline, Penicillin, Cephaloridineの順に高値を示したと報告しているだけである。著者も, 純粋な膵液中への各種抗生物質の移行を観察する目的から, 雑種成犬を用いて, れを開腹, 十二指腸を切開し, 主膵管に直接カニユレーションをおこない, 純粋な膵液を採取し, 抗生物質濃度を経時的に測定し, 一連の成績を得ることができたので報告する。
  • 小林 収, 津村 芳雄
    1973 年 26 巻 5 号 p. 439-442
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    耐性菌に有効であり, 抗菌スペクトルの広い一連の半合成ペニシリンの中で, アンピシリン (AB-PC) は, 耐性ブドウ球菌ばかりでなく, グラム陰性桿菌群にも抗菌力を示す広範囲抗生物質である。
    現在用いられている注射用AB-PCは, 水溶性Na塩が用いられているが, 溶解後の安定性が悪く, また尿中への排泄が比較的早く, 有効血中濃度の持続性が短い等の欠点がある。
    これら製剤上の欠点を改良した新しいAB-PC, HI-63 (懸濁AB-PC) が開発され, 製剤の提供をうけたので, 単純性尿路感染症に使用し, 以下の結果を得た。
  • 小林 章男, 雨宮 浩, 田島 朝信, 本池 洋二
    1973 年 26 巻 5 号 p. 443-448
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    いわゆる“Bacteroides”の名は, 嫌気性無芽胞グラム陰性桿菌で, 口腔咽頭, 腸管および性器の正常菌叢をなしている菌群を包括して用いられている1)。この菌群は, 上述の部位において, 重要な感染起炎菌となつており, 嫌気性グラム陽性球菌であるPeptococcus, Peptostreptococcusとともに, 嫌気性菌感染症において主要な地位をしめている2, 8, 9)。
    近年, 病院内においては, グラム陰性桿菌感染症の比重がましてきており18), この感染症には, Aminoglycoside系薬剤が多く有効である。しかし,“Bacteroides”は, これら薬剤にしばしば耐性を示し, 治療上この点に注意が払われねばならない。
    Lincomycin (Lincocin®) およびClindamycin (Dalacin®) は, グラム陽性球菌に有効な抗生剤として知られているが, 最近Bacteroidesにも試験管内2, 3, 4, 10, 14) および臨床的5, 6) に有効であることが報告されている。
    本報では, 臨床材料分離“Bacteroides”の薬剤感受性, およびこの菌による敗血症3例, 膿胸1例に対するLincomycinsの治療効果について報告する。
  • 村川 武雄, 西田 実
    1973 年 26 巻 5 号 p. 449-453
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    In vivoにおける抗生物質の治療効果は, 主としてマウスの全身感染症の治療成績によつて評価されている。しかし, 抗生物質の生体内濃度は, 動物種によつて異なり, 抗生物質のin vivo効果を1種の感染実験系だけで評価するのは望ましくない。さきにわれわれは, クロトン油によつて作成したラットの無菌炎症Pouch浸出液中への抗生物質の移行性について報告したが1), 今回このPouch内に菌を接種して1種の局所感染系を確立し, これに対する2, 3のセファロスポリン誘導体の効果を検討した。
  • 小児科領域における薬動力学的検討
    中沢 進, 佐藤 肇, 渡辺 修, 定岡 啓三, 藤井 尚道, 安部 政弘, 梅村 甲子郎
    1973 年 26 巻 5 号 p. 454-458
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    3', 4'-Dideoxykanamycin B (以下, DKBと略記する) は, カナマイシン耐性菌や緑膿菌感染症に対して臨床的に大きな有効性が期待されている抗生物質で, その吸収, 排泄, 分布および代謝については究1, 2, 実験動物における研) は, すでに報告されており, また成人における薬動力学的検討も市川らを中心におこなわれ3), 成人に対して臨床的に本薬物を使用するばあいの指針となる資料が得られている。
    DKBは, その抗菌性から, 小児科領域における諸感染症に対しても有力な薬剤として使用できることが期待されるが, 小児や乳幼児は吸収, 排泄, 分布, 代謝どの薬動力学的能力が成人のそれと異なることが考えられるしたがつて, 成人において得られた成績をそのまま準用して薬剤投与計画をたててよいかどうか問題がある。
    本報では, 小児, 乳幼児にDKBを投与して, その血清中濃度と尿中排泄量を測定し, 薬動力学的検討をおこなつた結果を報告する。
  • 小松 信彦, 南雲 昇, 雨宮 功治, 加藤 桃代, 嵯峨 克昌
    1973 年 26 巻 5 号 p. 459-469
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    前報1) において, 担子菌多糖Schizophyllan (以下SPGと略す) が, 諸種の急性の実験的細菌感染症に対して非特異的に感染防御効果を発揮することについて報告した。今回は, 慢性感染症であるマウスの実験的結核症に対するSPGの効果, 他の抗結核薬との併用効果およびそのさいの各種臓器の病理組織学的変化の特徴について報告する。急性感染症のばあいは, SPGで動物を前処置することによつて感染防御能の増強がみとめられたが, 慢性型の経過をたどる結核症では, 結核菌感染後からSPG注射を開始することによつても, 充分に延命または治療効果をあげることができた。
  • 小林 稔
    1973 年 26 巻 5 号 p. 470-474
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    従来から感染症起病菌の各種化学療法剤 (以下, 薬剤と略称) に対する感受性の程度を略知するためには, 試験管内MICを測定することが必須の手段となつている。他方, 起病菌に対する各種薬剤の最少菌殺滅濃度 (以下, MBCと略称) を測定することの重要性が, とくに難治性または抗療法性の感染症には必要であるといわれて来ている。そして, このMICとMBCの測定値は, 近似の値をしめすとされている。たまたま私達は, 1972年3月のCarbenicillin研究討議会において, 高い薬剤の体液内濃度を示しながら, 除菌効果, ひいては臨床所見に全く改善をみられなかつた症例がすべてMICとMBCとの間に大きなひらきのあることを報告した1)。そこで, 臨床分離株のうちいくつかの菌株を選択し, 薬剤に対するMICおよびMECを測定し, 両者についての比較検討を尿路感染症起病菌としてのグラム陰性桿菌についておこなったので, その第1報を報告する。
  • 橋本 憲二, 庄司 佑
    1973 年 26 巻 5 号 p. 475-478
    発行日: 1973/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    日本医科大学第3外科学教室において, 1972年11月から1973年3月末までに, 20例の胸部疾患患者の術後に, セファロシン大量静注法 (1日8g以上) を施行し, 同法はわれわれに充分満足すべき感染予防効果と著明な副作用のないことを経験したので, ここに報告する。
    どのような部位の, どのような手術に対しても, 感染は最も忌むべき合併症である。胸部外科, 特に心臓外科では, 一般に, 他領域の手術よりも手術時間が長く, 多くの人手を必要とし, 種々の医療器械も用いる。当然, 手術野への落下細菌数の増加が予想される。また, 循環系が露出されており, そのまま細菌が生体の血中に入るおそれがある。人工心肺の使用, 大量の輸血などのため, 細菌感染の機会が多く, 感染に対する生体防禦機構の低下も予測される。人工弁, テフロン布などの異物を生体へ縫着するため, これらの異物が細菌性心内膜炎の病巣となりやすく, 一旦このような状態をきたしたときの治療の困難さは, 周知の事実である。そこで, 感染予防対策は胸部外科, 特に心臓外科領域では, きわめて重要であり, 一層の注意が必要である。細菌性心内膜炎の治療には, 最低血中濃度がMICの5~10倍必要であるとの報告もあり, 術後感染症として, 細菌性心内膜炎に最も注意を払わねばならない心臓外科の感染予防において, 抗生物質の大量投与は有意義であるが, 反面, その副作用をも留意しなければならない。今日, セファロシン (商品名: ケフリン) の20例におよぶ胸部手術患者に術後使用する経験を得たので, 報告する。
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