The Japanese Journal of Antibiotics
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マウスのマクロアァージ内および肺内結核菌の運命におよぼすSchizophyllanの効果
南雲 昇
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1974 年 27 巻 2 号 p. 101-103,105

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抄録

Basidiomycetes (担子菌類) のTricholomataceae (シメジ科) に属するSchizophyllum commune (スエヒロタケ) は, その菌糸培養炉液中に単純グルカンであるSchizophyllan (以下, SPGと略) を生産するが, SPGはβ-1, 3結合をなす直鎖状のグルコース残基3個に対して1個の割合で1分子のグルコースがβ-1, 6結合を介して分岐した粘性の強い物質である。スエヒロタケの培養条件については, 小松ら1) が, またSPGの調製法, 構造および物理化学的性質に関しては, 菊本ら2, 3) が詳細に報告している。
はじめ, SPGは数種の実験的同種皮下移植腫瘍に対して1~5mg/kgという少量の投与ですぐれた治療効果のあることがみいだされ4), その後, 小松ら5~9) によつて種々の基礎実験がおこなわれた結果, このものは正常マウスにおいて, Zymosanの40分の1量の投与でZymosanをしのぐCarbon clearance率の尤進5) をもたらし, 前処置によつて腹腔浸出細胞の食菌能5) とLysosome水解酵素活性6) の増強をもたらすとともに, 諸種の急性細菌感染症に対する感染防御能を非特異的に高める作用5) があることがわかつた。また, SPG投与によつて腫瘍が完全退縮したマウスでは, 腫瘍抗原存在下で顕著なマクロファージ遊走阻止現象がみられ, 移植腫瘍に対する細胞性免疫の成立に影響を与えることが示唆された7) 。さらに, 慢性感染症であるマウスの実験結核症に対して, SPG単独またはほかの抗結核薬との併用において, 著るしい延命効果がみとめられ, そのさいの各臓器の病理組織学的所見においても, 治療効果が明らかにみとめられたことをすでに報告8) したが, SPGのこれらの作用は腫瘍細胞や病原体に直接作用するのではなくて, 非特異的な宿主防御機構増殖作用によるものであることが明らかとなつてきた。
今回著者は, SPGが実験結核症マウスの肺内生菌数の経時変化におよぼす影響について実験をおこない, また, SPG前処置正常マウスの腹腔マクロファージを組織培養して, これに結核菌を食菌させたのち, マクロファージ内結核菌の運命を経時的に追跡し, 興味ある知見を得たので報告する次第である。

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