The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
Gentamicin耐性グラム陰性桿菌敗血症のAmikacinの治療知見
富岡 一小林 芳夫玉谷 青史森下 鉄夫長谷川 弥人
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 28 巻 3 号 p. 305-308

詳細
抄録

グラム陰性桿菌 (GNR) 敗血症が, 米国においては, Du PONTら1) によれば1964~1966年頃から増加している。慶応義塾大学病院においても1970年を境に殖えはじめ, それまでの年間平均6~7例前後から, 1972年には17例, 1973年には32例を経験し, 1974年には年間56例のGNR敗血症を経験するにいたつている2, 3)。しかもその予後は, 最近の化学療法をもつてしてもきわめて不良で, いずれの報告でも50%前後の死亡率がみられている。われわれの血液疾患を基礎疾患とする敗血症の経験でも, Pseudomonas aeruginosaで50%, E, coliで36.4%, Klebsiellaで40%の死亡率であつた4)。それだけに, GNR敗血症の適確な治療法の確立と, その実施は, 原因菌の把握にはじまり, 今日においても一層つよく要望されている。
しかも近年敗血症から分離されてくるGNRは, β-Lactam系抗生剤に対して, 他の病巣由来株より感受性が低く, 高度耐性株も多い2,4)。したがつて, GNR敗血症ではβ-Lactam抗生剤とともに, 治療上の支柱となるAminoglycoside系抗生剤, とりわけGentamicin (GM) 系抗生剤の意義は最近ますます高まつてきた。しかし, GMにも1973年以降, 耐性株が目立ちはじめ, 1974年にはいちじるしくその数をました。血中分離GNR株のGM耐性率は, 菌種にもよるが11.5%から18.8%にある3)。また入院患者の尿中由来のKlebsiellaでは30.6%にGM耐性株が検出されており8), GM耐性GNR感染症の治療法が, 早急に要望されるであろう。
この点に関し, ROSENBLATTら5), KLASTERSKYら6) は, AmikacinがGMと交叉耐性のないことを示した。われわれも, AmikacinがGM, Tobramycin, Dibekacin耐性株との間で交叉耐性をもたないことを確めている3)。最近, GM無効のP. aeruginosa, Proteus mirabilisによる2例の敗血症例に遭遇し, GM耐性GNR敗血症におけるAmikacinの臨床成績にふれる機会をえた。その経過概要についてのべる。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top