The Japanese Journal of Antibiotics
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新抗生物質Fosfbmycinの吸収,分布および排泄
第1報Fosfbmycin-Ca塩の吸収,分布および排泄
藤田 正敬友野 法子安部 政弘細井 薫佐藤 豊美三浦 太郎
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1975 年 28 巻 3 号 p. 309-313

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抄録

新しい抗生物質であるFosfomycin ((-)-cis-1, 2-epoxypropylphosphonic acid) のCa塩について, 経口用製剤開発を目的として絶食したラット, ウサギおよびイヌを用いて, 経口投与における吸収, 分布および排泄などの基礎的検討を加え, 次のような成績を得た。
1) ラットを用いた実験では, 投与量を多くすると, 消化管吸収性の指標の1つである尿中排泄率は小さく, 逆に糞中排泄率は大きくなり, 吸収効率は低下するようであつた。しかし・尿中排泄量としては増加しているので, 投与量の増加は血清中濃度上昇に寄与していると考えられた。
2) ウサギおよびイヌを用いた実験では, 一般的にいわれているように, 溶液として投与したほうが懸濁液として投与したばあいよりも吸収性が良好であつた。しかし, 前者のばあい・溶解するために水量が多く, 必ずしも溶解過程または溶解速度だけが影響しているとは考えられなかつた。
3) ラットおよびイヌを用いた実験では, 比表面積計測定法による1.50μと0.64μ程度の粒子径の差は, 吸収性にほとんど影響をおよぼさず, 原末は微細化処理をおこなわずに製剤に使用できると考えられた。
4) 消化管吸収性は, ラット>イヌ>ウサギの順に良好で, 種差が多少あるようであつた。このような相違は, 消化管の生理的機能はもちろんであろうが, 吸収部の長さのような解剖学的相違も大きく影響しているのではないかと推察された。
5) ウサギにおける臓器中濃度は, 腎において最も高く, 次いで肺, 心などであつたが, いずれの臓器についても, その経時的推移はほとんど血清中濃度に相似し, 24時間後においても初期値を維持するものはなく, 特定臓器への残留性はみとめられなかつた。
6) Fosfomycin-Ca塩の消化管吸収性は, 動物種によつて多少ことなるが, 比較的良好で, 粒子径の吸収性におよぼす影響はほとんどなく, 製剤化にさいしては原末粒子の微細化は特に必要でないと考えられた。また, 本物質は一たん体内に分布したのちは, 特定臓器に残留せず, 体外に排泄されると考えられた。

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