1976 年 29 巻 10 号 p. 928-932
男子淋菌性尿道炎は, いうまでもなく性病の1つでゐり,Neisseria gonorrhoeaeの感染である。性病は忌むべきものであり, 根絶されるべき疾患ではあるが, その患者数は減少していない。一方, 化学療法という立場からは, 症状が顕著で, 起炎菌が単一な本症は, 化学療法剤の効果判定にはきわあて都合がよい1)。
しかし, 本症にたいしてPonicillinが初期に示したような画期的な治療効果は得難くなり, Ponicillinにたいする本菌の感受性の低下が指摘されるとともに2), Penicillinによるアナフイラキシー・ショックのために, 第1線病院において, 本症にたいしてPenicillinが使用される機会が著るしく減じている。それにつれて, 他の抗菌薬剤が使用される機会が多くなつている。
欧米では, 本症にたいしてPenicillin3), Tetracycline系薬剤4) の1回投与療法が試みられている。最近, われわれも男子の急性淋菌性尿道炎にたいしてSpectinomycin 2g 1回筋注療法を試みたので, その成績について報告する。
Spectinomycinは, 1961年米国アップジョン社のMASONらによつてStreptomyces spectabilis NRRL 2792の培養炉液から発見されたアミノサイクリトール抗生物質であり, Fig.1のような構造式をもつ。