The Japanese Journal of Antibiotics
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Spectinomycinによる女子急性淋疾の治療
松田 静治丹野 幹彦柏倉 高
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1976 年 29 巻 10 号 p. 933-935,937

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抄録

第2次大戦後急激な増加をみた急性淋疾は, その後は社会秩序の回復, 抗生物質の出現によつて, 発生数の減少を来たしたが, 近年になつて国際交流の高まり, ペニシリン (PC) 耐性菌の出現などの要因も加わつてか, 再び淋疾の増加が指摘されるに至った。女子における淋疾は, 淋菌性子宮頸管炎のばあい, 定型的な症状 (多量の黄色膿性帯下) を急性症でも見逃されるおそれがあること, 慢性症の頸管帯下も他の帯下との区別がつけ難いこと, したがつて無症候性の淋疾が感染源として今後はびこる可能性が充分予測される現状である。一方, 治療面からみて女子淋疾の第1選択薬剤であるPCにおいても, 淋菌に対する感受性の低下が既に報告されているほか, 過敏反応に対する配慮も現実に重要となつて来た。加えて, 女子は男子にくらべ淋疾の治療は一般に困難で, PCの治療量も男子より大量を必要とするが, 初回治療後来院しないもの, 治療中途の中断例が割こ多く, この点治療効果の把握が十分でない. このため近年, 抗生物質の大量投与による初期の衝撃療法であるOne shot療法 (1発療法) が本症の治療上注目されて来た。たとえば, 水性Procaine PC-Gの1回大量(480万単位, これ)こProbenecid 1.0gを併用するばあいもある) 筋注による治療成績の向上がすでに指摘されているほか, 米国ではさらにSpectinomycin (Trobicin) のOne shot療法も盛んに試みられている。
われわれは今回, 女子の急性淋疾にSpectinomycinを使用する機会を得たので, 以下に臨床成績の概要を報告する。
Spectinomycinは, 1961年に米国アップジョン社でStreptomyces spectabilisの培養炉液から得られたアミノサイクリトール抗生物質で, 毒性が低く, 殺菌作用をもち,Neisseria gonorrhoeaにはMIC 6.25μg/mlを中心に感受性の分布を示し, 血中濃度, 尿中排泄ともかなりよい結果が報告されている。今回の実験は, 本剤の筋注剤の臨床応用である。

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