The Japanese Journal of Antibiotics
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開腹術後の持続導尿について
逆行性尿路感染症の検討
大田 治幸大口 善郎坂口 寛正野納 邦昭井内 敬二韓 憲男南波 正敦狩野 光将吉田 静雄得能 輝男伊藤 篤
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1976 年 29 巻 6 号 p. 607-611

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抄録

術後の持続導尿についてみたばあい, 泌尿器科および婦人科領域の術後には, 欠くべからざる処置であるが, 一般腹部外科では, 直腸癌根治術等の一部の疾患の術後以外は, その必要性はあまりみとめられていない。しかし, 腹部外科術後では, 術当日や術後1日目には自排尿困難なことが多く, このばあいはそのつど, カテーテルを挿入し, 尿の排泄をはからねばならず, 術後患者の苦痛の1つとなつている。当院の外科では, 昭和46年にH. C. U.(High care unit) が開設されて以来, 術後患者の集中管理をおこなつて来た。そのさい, 術直後に留置カテーテルを挿入し, H. C. U. に収容している。2~3日間持続導尿をおこなつている。開腹術後2~3日間の短期間持続導尿をおこなうことによる利点は, 膀胱充満や排尿時の腹圧による創部痛が緩和されること, 経時的尿量測定が可能であり, 循環動態の把握に役立つこと, 黒色尿等の異常尿が早期に発見できることがある反面, 欠点としては, カテーテルを通しての尿路感染が考えられる。また, 直腸癌根治術後等では, その手術部位から考え, 神経因性の尿路機能障害をきたしやすいこと, 手術創部の汚染等から7~10日間の長期の持続導尿を必要とし, このばあいには, 逆行性尿路感染のほかに, 尿道狭窄等の他の合併症も来たしやすいといわれている。今回は, 開腹術後に短期間および長期間持続導尿をおこなつたばあいの尿路感染について検討をおこなつた。

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