1977 年 30 巻 10 号 p. 840-846
数年来, 院内感染が臨床医学分野において重要な問題としてとりあげられており, グラム陰性桿菌, 主として緑膿菌, Klebsiellaがその原因菌として最も注目されてきた1)。しかし, そのほかの細菌による感染症も増加しつつあり, Opportunistic infectionまたはNosocomial infectionとして重要視されるに至つた2,3)。
KASSらは1967年来, Boston City Hospitalでの臨床材料からSerratiaの分離頻度が増加していることを報告した4)。最近, 順天堂大学痛院中央臨床検査室においても, 各種臨床材料から分離されるSerratiaの頻度が増加の傾向にあり, とくに尿, 喀痰からの分離件数の増加が目立つようになつてきた。
Serratiaは, ヒトの感染症の原因菌にはなり得ないと考えられていたが, 近頃は慢性消耗性疾患に合併または続発する感染症の原因菌として注目され5~8), また, Serratiaは多くの薬剤に対し耐性を示し, 常用薬剤による治療にしばしば抵抗を示すなどの問題点が指摘されている。
私共は臨床材料から分離されたSerratiaについて, 尿路分離株を中心に, 各種抗生物質に対する感受性検査をおこなつた。