The Japanese Journal of Antibiotics
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小児の急性咽頭炎および急性扁桃炎を対象としたCephalexinの臨床評価
抗生剤の薬効評価法に関する若干の考察
紺野 昌俊後藤 昌司寺西 孝司伊藤 昌男安田 正俊吉備 雅男木村 元朗
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1978 年 31 巻 2 号 p. 72-82

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抄録

今日, 多数の抗生物質が相次いで開発されている。それら抗生物質の効某判定は, 感染局所における細菌の消長を経時的に追跡して, 抗生物質無投与のばあいより有意に早く消失するかどうかで評価するのが最も適切であろうが, 尿路感染症などの一部感染症を除いて, 細菌の経時的消長を把握することは技術的に困難である。したがつて, 実際の臨床評価においては, 細菌の消長に皮応しやすい体温など臨床症状の推移をもつて代用されているのが現状である。いわば, 鏡に写された虚像によつて評価がなされているわけであり, このため, これらの臨床症状の経時的推移およびそれらと効果判定との関係についての知識が集積されていかねばならないと思われる。
一方, これらの抗生物質の有効性, 有用性についでは, 比較試験, ことに二重盲検法が繁用されている。そのさい, 公平性を期すために「十分な施設がある医療機関} こおいて経験ある医師により臨床がおこなわれたもの」とされ, 一般的には大学病院などそれに準ずる公的機関においておこなわれたものが望ましいとされている。しかし, 開業医や中小病院においても, 十分な施設がある医療機関において経験ある医師によって実施されたものであれば, 当然評価に耐えうる臨床成績に成り得るであろうし, 特に対象疾患が外来患者を主とした軽, 中等症のばあいには, 症例数や患者の来院聞隔などの面からみると, 大学病院などよりもむしろ開業医や中小病院で治験をおこなうほうが適切であるぱあいもありえよう。
今回, 筆頭著者である紺野は, 塩野義製薬で開発された持続性セファレキシン製剤 (以下S-6437) を従来のセファレキシン (以下CEX) と比較する二重盲検法1) のコントローラーとして解析に関与する機会を得, この臨床治験が公的病院でない純然たる開業小児科医のグループでおこなわれたという特異性にも興味をもち, 本治験で得られた成績を解析対象として, 臨床症状の経時変化およびそれらと主治医の効果判定との関係について分析し, どのような指標で, どのような時期に効果判定がなされでいたかを検討するとともに, それらの成績からみた効果判定の妥当性について考察を加えたので報告したい。加えて, この解析をするにあたつて, 貴重な臨床成績を提供していただいた開業小児科医の先生方に敬意と感謝を呈したい。

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