The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
泌尿器科領域におけるバカンピシリンの検討
西尾 彰熊本 悦明酒井 茂坂 丈敏寺田 雅生疋田 政博
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 32 巻 8 号 p. 839-845

詳細
抄録

泌尿器科領域の感染症に対するBacampicillinの臨床検討をおこなった。 対象は, 急性単純性膀胱炎9例, 急性単純性腎孟腎炎7例, 急性淋菌性尿道炎および慢性前立腺炎の各1例, 計18例 (年令24~59才, 男2例, 女16例) であった。 Bacampicillinは, 1日750~1,000mg (250mg×3, 4回) を4~14日間投与した。 効果判定は, 急性単純性膀胱炎についてはUTI薬効評価基準にしたがい, 急性単純性腎孟腎炎はUTI基準に準拠した。 すなわち, 症状のうち排尿痛の代りに発熱を用いて判定した。 急性淋菌性尿道炎は宮本らの基準に, 慢性前立腺炎は熊本らの基準によった。 その結果, 急性単純性膀胱炎では著効5例, 有効2例 (脱落2例) で, 急性単純性腎盂腎炎では著効4例, 有効2例 (脱落1例) であった。 また, 急性淋菌性尿道炎は著効で, 慢性前立腺炎は有効であった。 副作用は, 4例にみとめられた。 内訳は発疹1例 (投与中止), 消化器症状3例であった。 投与前後の臨床検査値には特に異常の推移をみとめなかった。
新らしいAmpicillin誘導体であるBacampicillinは, スウヱーデンのアストラ社によつて開発されたAmpicillinのエステル化合物で, Fig.1に示す化学構造式をもつ。
欧米においては, すでに臨床使用されている薬剤であるが, その特長は服用後, 腸管からの吸収がきわめて良好であり, 同量のAmpicillinを服用したばあいにくらべ, 2~3倍高い血中濃度を得ることができ, かつ尿中排泄もより良好であるという。 この種の薬剤としては, すでにTalampicillinおよびAmoxicillin1)が日常の臨床で使用されているが, 尿路感染症を治療する我々泌尿器科医にとつて望ましい薬剤の1つになり得ることが期待される。
以下, 我々の臨床的検討の成績について述べたい。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事
feedback
Top