The Japanese Journal of Antibiotics
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32 巻, 8 号
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  • 第1編学童, 幼児, 乳児における血清内濃度の特異性について
    豊永 義清
    1979 年 32 巻 8 号 p. 779-785
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児科領域の細菌感染症において, 今日, 耐性菌や低感受性菌による感染症の問題が新らたに登場し, 抗生物質治療を開始するにあたって, 適性な抗生物質の選択とその薬動力学的特性を十分に理解し, 感受性の動向と併せて考えて使用すべきと考える。 日常診療で, しばしば遭遇する菌種として, Coagulase陽性ブドウ球菌, 大腸菌, クレェブシェラ, 他のグラム陰性桿菌による感染症があげられるが, これらの菌種による感染症は, ヒトの生物学的特異性からみても, 新生児, 乳児をはじめとして小児においては, 特に重要な菌種であり, 耐性ブドウ球菌およびグラム陰性桿菌に対して抗菌力があり, しかも幼若小児においても, 副作用の少ない薬剤を使用することが最善の方法である。 すでに, カナマイシン, ゲンタミシンが耐性ブドウ球菌およびグラム陰性桿菌に対して, 強い抗菌力を示していることは, 証明されているが, これらが筋注剤であり, 小児における静脈内投与の検討はまだなされていないし, 薬動力学的特性からも小児, ことに幼若乳児においては, 検討すべき薬剤と思われる。 セファロスポリンC系薬剤は, 耐性ブドウ球菌および多くのグラム陰性桿菌に対して強い抗菌力があり, ペニシリン系薬剤と同様に, 副作用も, アレルギー反応が主で, 腎毒性も特に強いものもなく, その作用機序も細胞膜合成阻害にあることにより, 新生児, 乳児をふくめ小児に対しても, 比較的安心して使用しうることができ, 小児科領域においても, 近年, 重症感染症に使用する機会が増加してきた。
    CePhaloridine, CePhalothinに関しては, 母子化学療法研究会の機関報告やその他の学会報告がされっっある。 一方, 小児科領域での抗生物質の投与方法については, 筋肉内投与が, 四頭筋短縮症などにみられるように, 筋肉損傷の点から一般におこなわれなくなりつつあり, 中等症以上の感染症では, 静脈内投与が一般化してきた。
    今回, 著者は, セファロスポリンC系薬剤の中で, 我国において開発されたSodium-7- [1-(1H)-tetrazolylacetamido] -3- [2-(5-methyl-1, 3, 4-thiadiazolyl)-thiomethyl] -Δ3-cephem-4-carboxylateの化学構造をもつCefazolin (以下CEZと略す) について, 学童, 幼児, そして乳児について, One shot静注および点滴静注後の血清内濃度推移を測定し, そのPharmacokineticsについて検討したので報告する。
  • 第2編成熟児, 未熟児における血清内濃度の特異性について
    豊永 義清
    1979 年 32 巻 8 号 p. 786-794
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    合成セファロスポリンC系薬剤が, 今日小児科領域感染症の治療において, その主流を占めている。 それはセファロスポリンC系薬剤が, 広い抗菌力をもつこと, 中でも小児期に多いブドウ球菌感染症にも効果があり, その腎毒性の少ないことと相まつて広く使用されている。 著者は, 第1編において, セファロスポリンC系抗生物質, Cefazolin (CEZ) の学童, 幼児, 乳児におけるOne shot静注, そして1時間点滴静注の薬動力学的解析をおこない, 投与量, 投与回数, 投与法の検討をおこなった。
    今回は, 生理学的特徴からも, 当然乳児期以降の小児とは異なった配慮が必要と思われる新生児, 未熟児について検討した。
    新生児, 未熟児の化学療法の特異性に関しては, 1959年第7回全米抗生物質会議のパネルディスカッションで始めて取め上げられ, 我国でも1963年日本化学療法学会母子化学療法研究会で, 新生児, 未熟児期の抗生物質の安全性に関するRecommendationが, Pharmacokineticsを通じ, 活発に種々の薬剤しておこなわれている。 新生児, 未熟児に対する抗生物質の非経口投与は, 解毒排泄機構の未熟, 投与方法の困難性等, 様々な制約があり, その安全で適性な投与方法の確立が必要である。 そのため, 著者は新生児, 未熟児においては, 生理的変動の著明である生後1週間に注目し, 2者ともに生後3日以内, 4~7日, の例と比較して検討した。
    なお, 今回の成熟児, 未熟児についての成績の一部は, 日本化学療法学会母子化学療法研究会 (班長, 藤井良知教授) のCEZ研究班の1員として提出した成績も一部含まれている。
  • 127施設におけるアンケート調査成績
    小林 裕, 春田 恒和, 森川 嘉郎, 藤原 徹
    1979 年 32 巻 8 号 p. 795-805
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    化膿性髄膜炎は, 現在でも難治であり, 早期診断と化学療法強化が望まれる。 抗生物質の選択に当っては, 本症の現況, とくに起炎菌の動向を知る必要があるが, それほど多い疾患ではないので, 個々の施設の発表から全貌をうかがえるかどうかは疑問である。 そこで, 今回われわれは, 全国主要病院小児科に協力を求めて, アンケート調査をおこない, 127施設の成績を集計することができたので, 報告する。
  • iclacillinとSerratiopeptidase併用のばあい
    荒谷 春恵, 建石 英樹, 祢宜田 純子
    1979 年 32 巻 8 号 p. 806-811
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    実験的感染症における化学療法剤の影響については, すでに多くの報告があり, そのさいの化学療法剤とくに抗生物質の体内動態について, 森川ら1)は家兎のブドウ球菌性髄膜炎でのCephalosporinやAmlpoglycosidesについて, 柴田ら2)はモルモット背部膿瘍膿汁内へのPenicillin Gについて, また, 石原ら3)は家兎実験的胸膜炎, 実験的肺炎におけるSulbenicillinの病巣への移行, 著者のうち荒谷ら4)はブドウ球菌感染マウスでのJosamycinの体内動懇を報告している。
    ところで, 実験的肺炎動物について, 西ら5), 松本ら6)および副島7)によって, 主として, Klebsiella pneumo-niaeをマウスに噴霧吸入させる術式を用い, 肺内生菌数, 病変および死亡率なを指標として, 抗生物質のinvivoにおける効果を述べている。
    私どもはこの術式にならい, Klebsiella pnuemoniae NK31について, ラットを用い, 抗生物質の体内動態を検討することとした。 なお, ラットを供試動物として選んだ理由の1っには, 尿中排泄も併せ検討したいこと, および, 併用薬物のSerratipeptidase顆粒の投与にあだつて, マウスでは困難であつたことなどである。
    著者のうち, 荒谷8, 9)は, TetracyclineおよびSulbenicillinとSerratiopeptidaseとの併用を, 肺炎ラットで, また, ブドウ球菌感染マウスでのJosamycinとBromelainとの併用について報告4)した。
    抗生物質としてCiclacillinを選び, Serratiopeptidaseとの併用時の体内動態を検討し, 以下に述べる結果を得た。
  • 小酒井 望, 小栗 豊子
    1979 年 32 巻 8 号 p. 812-818
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    内服用新抗菌剤Pivmecillinamは, 主として尿路感染症に有効であるといわれ, 本剤は体内ではMecillinam (MPC) として抗菌力を発揮する. そこで私どもは, 尿路感染症の原因菌として頻度の高い1)大腸菌, Citrobacter, Klebsiella, Enterobacter, Proteusの5菌属について, 最近臨床材料から分離された菌株を用いて, 本剤の抗菌力を測定した. そして同時に, 内服用抗菌剤として広く使用されているAmpicillin (ABPC), Amoxicillin (AMPC), Cephalexin (CEX), Nalidixic acid (NA), Pipemidic acid (PPA) のそれと比較した。
  • Pivmecillinamの胆汁中移行とその臨床的効果
    谷村 弘, 竹中 正文, 丸山 啓介, 瀬戸山 元一, 向原 純雄, 日笠 頼則, 伊豆蔵 健, 藤井 一寿, 安本 裕, 関谷 司, 原 ...
    1979 年 32 巻 8 号 p. 819-829
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染症は, 胆汁うつ滞に加わつた細菌感染であり, 胆汁流出障害の外科的排除とともに, 合理的な抗生物質の使用法が大切である。 その選択の条件として,(1) 腎臓および肝臓への毒性が少なく,(2) 抗菌力および抗菌スベクトルの広いもの,(3) さらに薬剤の胆汁中移行の良好なものが挙げられている1)。
    Penicillin (PC) 剤などβ-Lactam類の薬剤は, きわめて低毒性であり, これらの条件に適している2)。 したがつて, 次々と新らしい半合性PC剤が開発され, とくにグラム陰性桿菌へのスペクトル拡大を期待するものが臨床に供せられている。
    Mecillinam (MPC) は, 1972年デンマークのレオ社で合成された注射用の新合成PC剤であり, 尿路感染症に対する臨床的有用性は, 欧米はもちろん本邦においても, すでに確認されている3).しかしMPCは, 腸管から吸収されにくいため, nvaloyloxymethyl-ester, すなわちPivmecillinam (PMPC) が経口用として開発された (Fig.1) 。 PMPC自体は抗菌活性を示さず, 経口投与後, 腸管壁内の非特異的Esteraseによって加水分解されて, もとのMPCとなって, 抗菌作用を発揮することが明らかにされている。
    本邦におけるPMPCの評価は, すでに第24回目本化学療法学会総会の新薬シンポジウムにおいてその有用性と安全性が確認されているが4), そのほとんどは尿路感染症であり, 胆汁中移行に関する基礎的検討や, 胆道感染症に対する臨床的効果の検討は, ほとんどなされていないといってよい。
    今回, われわれは, 胆道感染症の初期治療としての経口抗生物質の意義を検討する目的で, このPMPC (Melicin®武田) の基礎的, 臨床的検討をおこなつた。
  • 高橋 昌己, 一幡 良利, 碓井 之雄, 成川 新一, 吉田 耕作
    1979 年 32 巻 8 号 p. 830-838
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年β-Lactam系抗生剤およびAminoglycoside系抗生剤の開発がさかんにおこなわれているが, これら両系剤を用いた併用効果に関する研究もまた多数報告されている。 その多くは, 両者の協力作用をみとめているが1~3), 一部のβ-Lactam系抗生剤とAminoglycoside系抗生剤との間には, 拮抗作用があるとの報告4, 5)もある。 しかし, 併用効果をみとめた報告においては, 実験に用いた菌種は限られた菌属だけを対象としているため, なお再検討の必要があるものと考えられる。
    最近, 著者らはβ-Lactam系抗生剤として, Penicillin系のHetacillin, Cephalosporin系のCephapirinおよび, Aminoglycoside系のAmikacinを用いて, それぞれ2剤の併用効果を教室保存標準株および臨床材料から分離したグラム陽性球菌およびグラム陰性桿菌について検討を加え, 興味ある成績を得たので報告する。
  • 西尾 彰, 熊本 悦明, 酒井 茂, 坂 丈敏, 寺田 雅生, 疋田 政博
    1979 年 32 巻 8 号 p. 839-845
    発行日: 1979/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    泌尿器科領域の感染症に対するBacampicillinの臨床検討をおこなった。 対象は, 急性単純性膀胱炎9例, 急性単純性腎孟腎炎7例, 急性淋菌性尿道炎および慢性前立腺炎の各1例, 計18例 (年令24~59才, 男2例, 女16例) であった。 Bacampicillinは, 1日750~1,000mg (250mg×3, 4回) を4~14日間投与した。 効果判定は, 急性単純性膀胱炎についてはUTI薬効評価基準にしたがい, 急性単純性腎孟腎炎はUTI基準に準拠した。 すなわち, 症状のうち排尿痛の代りに発熱を用いて判定した。 急性淋菌性尿道炎は宮本らの基準に, 慢性前立腺炎は熊本らの基準によった。 その結果, 急性単純性膀胱炎では著効5例, 有効2例 (脱落2例) で, 急性単純性腎盂腎炎では著効4例, 有効2例 (脱落1例) であった。 また, 急性淋菌性尿道炎は著効で, 慢性前立腺炎は有効であった。 副作用は, 4例にみとめられた。 内訳は発疹1例 (投与中止), 消化器症状3例であった。 投与前後の臨床検査値には特に異常の推移をみとめなかった。
    新らしいAmpicillin誘導体であるBacampicillinは, スウヱーデンのアストラ社によつて開発されたAmpicillinのエステル化合物で, Fig.1に示す化学構造式をもつ。
    欧米においては, すでに臨床使用されている薬剤であるが, その特長は服用後, 腸管からの吸収がきわめて良好であり, 同量のAmpicillinを服用したばあいにくらべ, 2~3倍高い血中濃度を得ることができ, かつ尿中排泄もより良好であるという。 この種の薬剤としては, すでにTalampicillinおよびAmoxicillin1)が日常の臨床で使用されているが, 尿路感染症を治療する我々泌尿器科医にとつて望ましい薬剤の1つになり得ることが期待される。
    以下, 我々の臨床的検討の成績について述べたい。
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