小児科領域の細菌感染症において, 今日, 耐性菌や低感受性菌による感染症の問題が新らたに登場し, 抗生物質治療を開始するにあたって, 適性な抗生物質の選択とその薬動力学的特性を十分に理解し, 感受性の動向と併せて考えて使用すべきと考える。 日常診療で, しばしば遭遇する菌種として, Coagulase陽性ブドウ球菌, 大腸菌, クレェブシェラ, 他のグラム陰性桿菌による感染症があげられるが, これらの菌種による感染症は, ヒトの生物学的特異性からみても, 新生児, 乳児をはじめとして小児においては, 特に重要な菌種であり, 耐性ブドウ球菌およびグラム陰性桿菌に対して抗菌力があり, しかも幼若小児においても, 副作用の少ない薬剤を使用することが最善の方法である。 すでに, カナマイシン, ゲンタミシンが耐性ブドウ球菌およびグラム陰性桿菌に対して, 強い抗菌力を示していることは, 証明されているが, これらが筋注剤であり, 小児における静脈内投与の検討はまだなされていないし, 薬動力学的特性からも小児, ことに幼若乳児においては, 検討すべき薬剤と思われる。 セファロスポリンC系薬剤は, 耐性ブドウ球菌および多くのグラム陰性桿菌に対して強い抗菌力があり, ペニシリン系薬剤と同様に, 副作用も, アレルギー反応が主で, 腎毒性も特に強いものもなく, その作用機序も細胞膜合成阻害にあることにより, 新生児, 乳児をふくめ小児に対しても, 比較的安心して使用しうることができ, 小児科領域においても, 近年, 重症感染症に使用する機会が増加してきた。
CePhaloridine, CePhalothinに関しては, 母子化学療法研究会の機関報告やその他の学会報告がされっっある。 一方, 小児科領域での抗生物質の投与方法については, 筋肉内投与が, 四頭筋短縮症などにみられるように, 筋肉損傷の点から一般におこなわれなくなりつつあり, 中等症以上の感染症では, 静脈内投与が一般化してきた。
今回, 著者は, セファロスポリンC系薬剤の中で, 我国において開発されたSodium-7- [1-(1H)-tetrazolylacetamido] -3- [2-(5-methyl-1, 3, 4-thiadiazolyl)-thiomethyl] -Δ
3-cephem-4-carboxylateの化学構造をもつCefazolin (以下CEZと略す) について, 学童, 幼児, そして乳児について, One shot静注および点滴静注後の血清内濃度推移を測定し, そのPharmacokineticsについて検討したので報告する。
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