The Japanese Journal of Antibiotics
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小児感染症に対するHI-56G (Ampicillin-Dicloxacillin合剤細粒) の使用経験
小野木 宏
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1981 年 34 巻 1 号 p. 21-24

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抄録

抗生物質の相次ぐ開発によつて, 細菌感染症の治療は著るしい発展を見るに至つた。一方, それに伴ない広範囲スペクトラムをもつ抗生物質の普及は, 各種抗生物質耐性菌を出現させ, 特に多剤耐性化した弱毒常在菌による感染症の多発につながつている。
抗生物質使用の原則は, 起炎菌を同定し, それに適応となる薬剤を選択し, 副作用を念頭におきつつ使用することにある。しかし, 実際の臨床においては, 細菌学的検査成績が得られないこともあり, その成績が判定される以前に起炎菌を推定して薬剤を投与しなければならないこともある。このさいに, 第1選択として選ばれる薬剤の条件として, ある程度の広範なスペクトラムをもち, しかも宿主に対し, 副作用の少ないものが望まれる。こういつた条件に適合する抗生物質としてペニシリン系薬剤やセファロスポリン系薬剤が繁用されてきたが, 近年, これらに対し耐性をもつ細菌が増加してきている。これは, 細菌の産生するβ-Lactamaseにより薬剤が分解され, 不活化されるためといわれている。Ampicillin (AB-PC) は, グラム陽性, 陰性菌に抗菌力を示す半合成ペニシリンであるが, β-Lactamaseにより不活化される欠点をもつ。Dicloxacillin (MDI-PC) をはじめとするIsoxazolyl系ペニシリンは, このβ-Lactamaseに対して阻害作用をもつことが知られている。そのため, AB-PCとMDI-PCとの併用が, 抗菌スペクトラムの拡大と, AB-PC耐性菌のβ-LactamaseによるAB-PCの分解が阻害され, 両者の相乗効果が期待される。なかでも, AB-PCとMDI-PCとの比が, 2: 1のばあいに優れた効果が発揮されることがin vitro, in vivoの成績で確認され, その内服用合剤が実用に併せられるに至つた1~5)。今回1g中にAB-PC66.7mg (力価), MDI-PC33.3mg (力価) を含有する小児用細粒が試作されたのを機会に, この薬剤の臨床的検討をおこなつたので報告する。

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