1981 年 34 巻 10 号 p. 1366-1386
細菌感染症は変貌しつつある。病原性の強いグラム陽性菌による感染が減少し, 病原性の弱いグラム陰性菌によるものが増加しつつある。このグラム陰性菌の主役は, 人体やその生活環境に常在するグラム陰性桿菌で, 平素無害菌とも呼ばれ, 易感染性の生体に感染を起すものが多い。しかもこれらのグラム陰性桿菌にはβ-Lactamaseを産生し, 現在広く用いられているβ-Lactam系抗生物質に耐性のものが多い。そのためβ-Lactamase抵抗性のCephalosporin剤 (CEPs) の開発が盛んで, 既に実用化されているもの, 近く実用化されるもの, その種類は十指に余るほどである。このたび新らしく開発されたCefmenoxime (CMX) もその1つで, 幅広い抗菌力をもつているといわれる。そこで私どもは, 臨床材料分離の各種細菌類について, 本剤と他のCEPsとの抗菌力を比較したので報告する。