The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児, 未熟児におけるCefmetazole (CS-1170) の安全性の検討
藤井 良知柱 新太郎吉岡 一滝本 昌俊長 和彦市橋 保雄砂川 慶介南里 清一郎中沢 進佐藤 肇近岡 秀次郎平間 裕一堀 誠黒須 義宇豊永 義清岩井 直一西村 忠史広松 憲二高島 俊夫田吹 和雄小林 裕森川 嘉郎春田 恒和藤原 徹本広 孝富永 薫山下 文雄清水 哲也石川 睦男張 南薫福永 完吾国井 勝昭柴田 清人由良 二郎鶴賀 信篤林 周作
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1981 年 34 巻 6 号 p. 893-902

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抄録

今日,細菌感染症に対する抗生物質の開発, 発達はめざましいものがある。一方, その使用頻度の増加も著るしく, その結果としてCephalosporinase産生菌,Penicillinase産生菌の増加が指摘されており, これらの菌が院内感染の原因として, 又Opportunistic pathogensとして問題となる, いわゆる弱毒菌が多いだけに, 今後治療上, 種々の問題が生じてくることが充分予想されるのである。
Cefmetazole (CMZ) は, 三共株式会社において独自に開発されたCephamycin系抗生物質で, グラム陽性およびグラム陰性菌に優れた抗菌力を示し, とくにβ-Lactamase産生菌に対し強い抗菌力をもち, 従来のセファロスポリン系, ペニシリン系抗生剤が無効なIndole陽性Proteus, Serratiaにも強い抗菌力を示すことが明らかにされている1)。
本剤の排泄は, 生体内で代謝をうけず, 活性型のまま尿中に排泄され, 毒性面では, 一般毒性はほとんどみとめなく, 腎毒性もCephalothin(CET), Cefazolin (CEZ) より少ないとされている2)。
このような本剤の特色からもCefmetazoleに対する治療効果の期待は大きいと考えられる。
そこで, 小児科領域においても将来重症感染症に, Cefmetazoleが必要になるとの判断から, 著者らは昭和52年に小児科におけるCefmetazole研究会を全国的に組織し, 幼児期以上の小児について3, 4, 7~18) Cefmetazoleの有効性と安全性を検討した結果, 小児期の有用性が確認されたことを発表した2, 3)。今回はさらに以下の理由から, 従来周産期化学療法を研究してきて母子化学療法研究会とは別にCS-1170周産期研究会を組織し, 新生児, 未熟児に対する本剤の有効性と安全性を検討した。
1. 母子化学療法研究会でとりあげ る薬剤は, 原則として既に, 市販され, しかも数年経過したものであり, 成人あるいは乳児を含む小児で安全性の確認されている薬剤の中から周産期の対象にも是非必要であると考えられたものをとりあげてきた。この原則からいうとCefmetazoleをとりあげるのは時機尚早である。
2. ただ, 既存の薬剤殊に旧型セファロスポリン剤に対する耐性化が急速に進んでいる現在, これら耐性菌による新生児重症感染症に対して用うべき化学療法剤がないという可能性が十分予想される。従つてそれに対処するためには現在開発中の強力なβ-Lactam系新薬セファロスポリン系4群, 5群に期待をおかなければならない。しかし現在すでにご小児についての十分な検討データが集積ざれ, 周産期感染症の検討可能であり, かつ価値が大きいと考えられるものはCefmetazoleしかない。

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