The Japanese Journal of Antibiotics
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Dibekacinの臨床的研究
人体各種組織内濃度および点滴静注による治療
中村 孝橋本 伊久雄沢田 康夫三上 二郎戸次 英一葛西 洋一中西 昌美
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1981 年 34 巻 6 号 p. 980-993

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抄録

Aminoglycoside系抗生剤のGentamicin (GM), Tobramycin (TOB), Amikacin (AMK) などは, グラム陽性菌から陰性菌にわたる幅広い抗菌スペクトラムをもち, 少量にて抗菌性を発揮する低いMICをもち, しかも炎症組織への移行性の良好な薬剤として, 広く使用されているが, 反面, 腎毒性と聴器および前庭神経障害があり, 蓄積性をもつとされ, このために本邦では筋注による使用だけがみとめられてきている。しかし筋注による投与は, 局所痛, 注射部位の硬結, 投与量の制限等の問題があり, さらに小児においては筋萎縮症の発生があるために, 適応に制限があつた。
一方, 現在広く用いられているPenicillin系合成剤, およびCephalosporin系薬剤に対する耐性菌の増加が近年問題となり, グラム陰性桿菌群がこの大部分をしめることから, アミノ配糖体系薬剤の効果が再認識されることとなつてきた。
欧米においては, 以前からAminoglycoside系薬剤の静注または点滴静注による使用が検討され, 実施されてきている。本邦においても近年アミノ配糖体の点滴静注による投与法の検討がおこなわれ, とくに筋注との比較が血中濃度, 尿中排泄等について検索され, 点滴静注法の有用性がみとめられつつある。しかし臨床効果との検討をおこなうためには, 血中濃度よりも, 感染病巣である炎症組織内の抗生剤濃度の検索がより必要であり, この方面の研究が必要であると考えられる。著者らは1976年からDibekacin (DKB) の人体各種組織内濃度についての検索を筋注によりおこなつてきたが, さらに点滴静注法による組織内濃度の検索をおこない, 筋注後の数値との比較検討をおこなつて, 多少の興味ある結果を得たので報告する。

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