The Japanese Journal of Antibiotics
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消化器外科におけるCefoxitinの術後感染防止効果
木藤 光彦
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1982 年 35 巻 9 号 p. 2213-2218

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抄録

近代外科学の進歩は麻酔, 輸血および輸液等の全身的管理面の発展によるところも大きいが, また抗生物質の発達によつて術後感染防止対策が講じられ, 今日のめざましい外科治療成績が得られている。
消化器外科領域ではβ-ラクタム系抗生剤の使用頻度は高く, その作用が殺菌的であり, 全身的副作用も少ないこと等が使用頻度の多い最大の理由とされている。β-ラクタム系抗生剤はその安全性のゆえ大量投与も可能ということで術後の感染防止, あるいは術後感染症の治療において, その高い有用性が認められてきた。
しかし, このβ-ラクタム系抗生剤においても細菌と宿主間の宿命的現象ともとれる耐性菌出現の問題からは完全には回避できず, 外科領域では感染治癒遅延因子の分析が重ねられるうち, β-ラクタム系抗生剤耐性菌が, その一因に関与するとの解釈が近年加えられた。このため, 耐性菌対策が外科領域では早急に解決されなければならない問題の1つにとりあげられてきた。
一方, 臨床細菌学的領域および臨床薬理学的領域では, すでに数年前から, その対策が講じられており耐性株におけるβ-ラクタム環加水分解酵素 (β-ラクタマーゼ) 1) の発見からβ-ラクタム環抵抗性増加, 安定化を目ざす抗生剤の開発的研究はつよく推進されてきた。
その結果, 現在, 各種側鎖の化学修飾2) による, いくつかの新しいβ-ラクタム系抗生剤の誕生をみるにいたり, それらの臨床的効果は大いに期待される。そのうちの1つであるβ-ラクタム環の7α 位に, メトキシ基をもつことでβ-ラクタマーゼに抵抗性を有するセフォキシチンナトリウム (マーキシン注射用, 以下CFXと略) の使用機会がえられたので, 使用内容, 臨床的効果および副作用につき検討を加えた。

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