The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
先天性胆道閉鎖症 (肝門部肝空腸吻合術後) におけるCefmetazoleの胆汁中移行に関する検討
宮野 武新井 健男駿河 敬次郎
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 36 巻 1 号 p. 31-36

詳細
抄録

先天性胆道閉鎖症 (以下CBAと略) の根治術として肝門部肝空腸吻合術術後の予後を左右する最も大きな問題の1つに, 術後上行性 (あるいは逆行性) 胆管炎 (いわゆるAscendingcholangitis) がある。本症の治療には当然抗生物質の使用が極めて重要である。すなわち術後上行性胆管炎の発生あるいは発生が予測される場合に,いかなる抗生物質をいかなる方法で使用するかが, 我々臨床医の最も知りたいところである。しかし現在まで幼若乳児はもとより小児における胆汁中への抗生物質の移行に関する詳細な報告は皆無に等しい。特にCBA患児の抗生物質の胆汁中移行に関して千葉ら1), 由良ら2) の報告はあるが, 極めて少なく, 実際の臨床上は胆汁の細菌培養, 分離菌の感受性試験は当然行うとしても, 我々の実地臨床上は単に経験により用いられていたに過ぎないと言つても過言ではない。
さて, 我々がCBA根治術時に腸内容の肝門部への逆流防止目的で造設する外胆汁痩としての空腸痩 (駿河II法3)) はFig.1に示すように, 肝門部肝空腸吻合部から流出する胆汁の全量が採取可能である。
今回, 成人での胆汁中移行が極めて良好で且つ, 胆道感染の主たる起因菌に対して著効が示され, 臨床的にも優れた報告がなされているセフェム系抗生物質Cefmetazole (以下CMZと略す) を経静脈的に投与し, 外痩から流出した胆汁中の移行濃度を測定することにより, 乳幼児, 特に肝機能障害児におけるCMZの胆汁中移行の実態を知る若干の知見を得たので報告する。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top