1983 年 36 巻 10 号 p. 2742-2749
近年, 感染症の起炎菌には, 従来のグラム陽性球菌に加えてグラム陰性桿菌の関与が増加しつつある。従つて, First choiceの抗生物質は, グラム陽性菌からグラム陰性菌まで広い抗菌スペクトラムを示すものが理想的で, 且つ安全性の高い薬剤である必要がある。武田薬品工業中央研究所において新しく開発されたCefbtiam (以下CTM) は新しいCephalosporin系抗生物質である。本剤は, 従来のCephalosporinとは違い, 7位側鎖に新規のAminothiazole環を持ち, 3位側鎖にTetrazole環を有すると言う構造上の特徴を備えている。そして, 非常に強いβ-Lactamase抵抗性を持つ薬剤である。又, in vitrol及びin vitroの薬効薬理試験において, グラム陽性菌からグラム陰性菌にわたる広範囲の抗菌スペクトラムを有すると言われている1)。これらの結果に基づき, 各方面において, 基礎的, 臨床的研究が報告されている1~4)。ところで, 耳鼻咽喉科領域感染症にやいては, 他領域のそれと同様に時代と共に, 起炎菌の変遷がみられる。その結果, 耐性菌やOpportunistic infectionの問題がクローズアップされ, しばしば難治性ないしは遷延化傾向のある感染症に遭遇し, その対策に苦慮しているのが現状である。
今回われわれは, 耳鼻咽喉科領域感染症に対するCTMの臨床効果を検討すると共に, その体内動態についても若干の検討を試みたので, その成績を報告する。