1983 年 36 巻 10 号 p. 2856-2868
小児における化学療法の特殊性は年令が幼若な程きわだつており, 殊に新生児, 未熟児, その中でも生後1週間未満のものにあつては, 諸種の問題を考慮せねばならない。すなわち, 肝腎機能の未熟性のため, 抗生物質の排泄が遅延し代謝の面でも年長児に比べ, 代謝が異なることもあり得る。更に, 抗生物質の蛋白結合の問題, ビリルビンとの競合による黄疸の増悪についても考えねばならない。
アミノ配糖体系抗生物質はPseudomonas aeruginosa及び他のグラム陰性桿菌の感染症の場合, 最も信頼し得る薬剤であり, 他系抗生物質無効の際には単独あるいは併用療法として使用されている1, 2)。しかし本系の薬剤は, 周知のように高い血中濃度を維持する場合, 腎障害, 聴神経障害を起しやすく, 本邦では, 筋肉内投与だけが許可されているのが現状である。
しかし, 特に小児においては, 抗生物質の投与は, 筋肉内投与においては筋拘縮症の問題があり, 一般的には静脈内投与がなされていることが多い。しかし小児科領域におけるアミノ配糖体系抗生物質の薬動力学の検討はあまりなされていない。我々はTobramycin (TOE) について, 学童期における静脈内投与時の安全性及び臨床的効果について報告3) をしたが, 今回, 新生児, 未熟児について更に検討を加えたので報告する。