The Japanese Journal of Antibiotics
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後の難治性髄膜炎に対するAmikacinの髄腔内投与
山嶋 哲盛正印 克夫染矢 滋小暮 裕三郎久保田 紀彦山本 信二郎
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1983 年 36 巻 3 号 p. 522-528

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抄録

脳外科の手術は長時間に及ぶことが多く感染の危険が高いため, 本邦においては, 閉頭に際し抗生物質入りの生食水で術野を洗浄したり, 術後に抗生物質を予防的に全身投与することが一般化している。従つて, いつたん術後髄膜炎を併発すると, 起炎菌の培養や同定は必ずしも容易ではなく, かえつて治療上の困難をきたす場合が多い。長時間の手術で体力を消耗した患者が髄膜炎を併発すると, 意識レベルや全身状態は極度に悪化する。この時ほど我々脳外科医が窮地に立たされ, 抗生物質の選択や投与法について考えさせられることはない。
術後髄膜炎の起炎菌としてはグラム陰性桿菌が多いとされるが, 最近ではGentamicin(GM)に耐性のものが漸増の傾向にある1)。今回, 我々はGM耐性菌による術後の難治性髄膜炎の3症例を経験し, 1日量で最大100mgのAmikacin (AMK) を髄腔内に投与することにより好成績を得た。AMKの髄腔内投与量については, 1日量でHAMORY2)は4 mg, SKLAVER3) は10 mg, BLOCK4) は20 mgとした。一方, 高木ら1) は20 mgから漸増し最大80 mgまで使用しその安全性を確認した。この様に, 髄腔内への至適投与量については必ずしも諸家の見解が一致している訳ではなく, 又, 予想外に報告が少ない。本論文では我々の経験をもとに, 術後の難治性髄膜炎の治療について, AMKの髄腔内投与法を中心に述べたい。

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