The Japanese Journal of Antibiotics
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硫酸Paromomycinの条虫駆虫効果及びその作用機構について
林 滋生加茂 甫
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1983 年 36 巻 3 号 p. 552-565

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抄録

硫酸Paromomycin (Aminosidine) は1959年, イタリアのMassa Marittimaの土壌から分離された放線菌Streptomyces chrestomyceticusから生産されるアミノ配糖体系抗生物質で, 広域スペクトラムの抗菌作用の他, 赤痢アメーバなど一部の原虫にも有効に作用することが知られ, すでに広く用いられている。一方, Paromomycin (PRM) は, 1959年Parke Davis社において南米コロンビアの土壌から分離された放線菌Streptomyces rimosus forma paromomycinusから, 生産され, 同様の抗菌, 抗原虫作用があり, 又ULIVELLI1, 2) によりテニア症の治療に用いられて以来, WAITZ, MCCLAY & THOMPSON, 3) SALEM & EL-ALLAF 4, 5), Parke Davis Co. 6, 7) BOTERO8) などテニア症に有効であるとの多数の報告があらわれた。又広節裂頭条虫症にも有効なことがTANOWITZ & WITTNER9) により報告された。広節裂頭条虫に対する効果は, 我が国でも金沢裕10), 石田和人ら11), 大鶴正満ら12), により報告されている。頭記のAminosidineはPRMと完全に同一ではないにしても, その化学, 物理及び生物学的活性において本質的には区別できず, 前者は後者に含まれるべきであるとされている13)。
硫酸Paromomycinの抗条虫効果については, GARINら14-6) の無鉤条虫, 金沢裕17) の広節裂頭条虫, 吉田幸雄ら18) の広節裂頭条虫, 無鉤条虫に対する有効性の報告がある。
我が国における人の腸管寄生の条虫症として, 古くから無鉤条虫, 広節裂頭条虫が主要なるものを占め, この他に大複殖門条虫, 小形条虫, 縮小条虫, 有鉤条虫, 有線条虫, 瓜実条虫などがあるが, 近年特に広節裂頭条虫が急増の傾向を示している19-22) 実情に鑑み, 有望な抗条虫剤としての硫酸Paromomycinにつき, その効果, 副作用並びに適正な薬量, 投与法の検討を行い, 併せて作用機構を明らかにすることを意図して, 昭和54年に条虫症研究会を結成し, でに3年を経過した。
構成組織はTable 1に示すとおりであるが, 筆者らはその世話役を務めて来たので, ここに現在まで得られた知見をまとめて概略を報告する。

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