1983 年 36 巻 3 号 p. 632-637
常態宿主であるイヌ, ネコの腸管に寄生するMesocestoides属条虫は稀に人体寄生を行うことがあり, 1942年にCHANDLER1) によるMesocestoides variabilisと小坂2) によるMesocestoides liueatusの人体症例が初めて紹介されてから, これまでに20例の報告がある。
今回, 著者らはわが国におけるM. lineatusの第13例, 世界におけるMesocestoides属条虫の第21例と思われる症例を経験し, 硫酸Paromomycinによる駆虫に成功したが, これはMesocestoi4es属条虫に対する硫酸Paromomycinの治験例としては, HUTCHISON and MARTIN (1980) 16) によつて報告されたMmiabilis症例に次ぐものであるのでその概要を報告し, 併せて最近その抗条虫作用が注目されている本剤の駆虫効果に関しても若干の文献を渉猟してみることにした。